西日本新聞

千年書房・九州の100冊

[俳句・詩集]一覧

尹東柱「空と風と星と詩」

今宵も星が風に吹きさらされる

 〈死ぬ日まで空を仰ぎ/一点の恥辱(はじ)なきことを、/葉あいにそよぐ風にも/わたしは心痛んだ。/星をうたう心で/生きとし生けるものをいとおしまねば/そしてわたしに与えられた道を/歩みゆかねば。//今宵(こよい)も星が風に吹きさらされる。〉「序詩」(伊吹郷訳、以下引用も同じ)
 2月16日。福岡市早良区の福岡拘置所近く...

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安永蕗子「青湖」

凛として強く、景を歌う

  ゆらゆらに月壺ひとつを呼ぶべしや湖をあまりて湧く水の音
  うしろ姿見せて佇ちゐる鷺一羽流離長巻すゑの葦むら (「青湖」から)

 阿蘇、白川、江津湖―。安永蕗子のそばには絶えぬ水の流れと讃(たた)える景がある。身を委ね、相聞し、ありのままに景を詠む。
 安永は「日の常を詠む」という。日とは太陽であり、日の...

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谷川雁「原点が存在する」 

「瞬間の王」は死んだのか

 クマのようにいかつい男が、彼について話すときは優しい目になった。
 「雁さんに会わなかったら、日本と日本語にこんなにかかわることはなかった」
 作家、C・W・ニコルさん(67)は1970年に谷川雁と初めて会った。谷川は当時、語学教育会社の役員。ニコルさんは職を求めてその会社を訪ねた。そこに「背が高く、ダンディーな...

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山之口貘「山之口貘詩集」

沖縄よ、傷は深いと聞いているが

 真夏の沖縄で、一本の木を探した。
 名前は「うむまあ」。那覇市で尋ね歩いたが見つからない。「モモタマナ」という和名を告げると、ようやくある男性が公園に案内してくれた。
 幹から水平に伸びた枝に、大人の手のひらよりも大きな葉を茂らせたうむまあは、立派な木陰をつくる木だった。詩人、山之口貘が「世はさまざま」に書いて...

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山田かん「記憶の固執」

胸の痛みに立ち返る夏

 山田かんの妹シュウ子(ゆうこ)が佐世保の日野峠で自死したのは原爆から8年の冬の日だった。病室が空いていないからと毛布も掛けられず廊下に放置された21歳の妹への「つきせぬ痛恨」が、詩と文章を綴(つづ)る兄の基点となった。
 1945年8月9日。徹夜の学徒動員から帰宅した14歳の山田は寝転んだまま新聞を手にとる。「そし...

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中村汀女「汀女句集」

母住む江津湖畔に心馳せ

 梅雨入り前だというのに、早くも熊本市はうだるような暑さだ。江津湖には涼を求めて散策する人々や、釣り人の姿があった。ゆったりと時間が流れる。そんな湖畔の風景に溶け込むように句碑が立つ。周囲には満開のころを少し過ぎたツツジが咲いていた。

 つつじ咲く母の暮(くら)しに加はりし (句集「都鳥」)

 汀女は自宅...

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那珂太郎「はかた」

 博多生まれの詩人那珂太郎にとって、ふるさとは、もうない。ふるさと「はかた」は遠い日の幻像である。4章200行からなる長編詩「はかた」は、その鎮魂として書かれた。
 35年前のことである。

 東京・久我山の自宅で那珂が記憶をたどる。
 十数年ぶり博多に戻ったという1971年のことである。町には、ヒッピーまがいのひげを生やした若者が細身のジーパンをはいて闊歩(かっぽ)していた。「博多...

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武者小路実篤「君も僕も美しい」

 山と山とが讃嘆(さんたん)しあうように
 星と星とが讃嘆しあうように
 人間と人間とが讃嘆しあいたいものだ (「君も僕も美しい」)

 詩の世界が、眼前の大パノラマと重なって胸に迫る。宮崎県木城町石河内の峠に建つ、武者小路実篤の文学碑。ただ、黒い石に刻まれているのは、よく言えば童心あふれる、正直言うと小学生の手習いのような字である。

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杉田久女「杉田久女句集」

 谺(こだま)して山ほととぎすほしいまゝ

 福岡県の霊峰・英彦山を詠んだ句である。1931年、日本新名勝俳句の帝国風景院賞(金賞)句に選ばれ、杉田久女の代表作の1つとなった。
 「谺」の堅い一文字で始まり「ほしいまま」とやわらかに広がっていく。久女は下の五文字が浮かばず、苦吟を重ねた。何度か英彦山を再訪し「ほしいまま」にたどり着くまでに何カ月もかかっている。
 記者も英彦山に登った...

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北原白秋「思ひ出」

 北原白秋の第二詩集で出世作の「思ひ出」は1911年、白秋26歳のときに東京で書き上げられた。記者もいま26歳。不遜かもしれないが同年の男を思い描きながら、その歩んだ道をたどった。
 水郷・福岡県柳川市は、縦横に掘割(ほりわり)がめぐる。柳の枝が水面に垂れるその掘割を、どんこ舟でゆらゆらと進んだ。身をかがめて橋をくぐると、日常とは異なった風景が広がる。心地よい風が追い越していった。
 白...

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若山牧水「若山牧水歌集」

 朝、集団登校する子どもたちは、学校玄関の前で立ち止まり、声をそろえて朗詠する。

 若竹の伸びゆくごとく子ども等よ真直ぐにのばせ身をたましひを…

 宮崎県日向市東郷町内の小学校5校では、登校時、若山牧水の歌を詠む。20年ほど前から受け継がれてきたその節回しは、学校によって微妙に異なっているのだそうだ。
 「今日も一日楽しく過ごそうって気持ちになります」。ランドセルの児童がそう言う。...

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