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出版ニュース

与えられた命を 風のように生きた 波多江伸子さん新著 「さようならを言うための時間」

 ●末期がん・41歳の弁護士が選んだホスピスライフ
 
 母を看取(みと)った日々の記録「モルヒネはシャーベットで」をはじめ、生きること、死ぬことを主題にした著作で知られる波多江伸子さん(福岡市城南区)の新たな書き下ろし『さようならを言うための時間-みんなで支えた彼の「選択」』が出版された。働き盛りの41歳で治癒不能な肺がんと診断され、選択肢として示された化学療法は選ばずに緩和ケアを受け、親しい友とともに充実した日々を生き抜いた弁護士渡橋(わたはし)俊則さんの1年5カ月をたどっている。

 北九州市小倉北区で法律事務所を開いていた渡橋さんが咳(せき)と微熱でかかりつけ医を訪ねたのは2005年2月。間もなく肺がんと判明し、手術は無理と診断された。

 渡橋さんは、旧知の医師、弁護士に身の処し方を相談し、そのつながりで死生学を研究する波多江さんと出会う。主治医以外の医師の意見を聴くセカンドオピニオンも活用し、これからの人生をどう生きるかをじっくり考えて治療法を選択。入院と副作用を伴う化学療法よりも、苦痛を和らげることを最優先する緩和ケアを選んだ。

 独身の渡橋さんは、通院治療を受けながら父や友と高知や沖縄・石垣島を旅した。好きな酒やごちそうを堪能し、医療者や看護学生に患者体験を講義した。

 緩和ケア病棟(ホスピス)での42日間の入院生活も、波多江さんを含む友人たちが入れ代わり立ち代わりにやって来てビールやワインを酌み交わし、時には街に出てステーキやしゃぶしゃぶを楽しんだ。

 そして2006年7月17日。薬物投与によって意識を低下させて鎮静状態にする「セデーション」を自ら医師に頼み、眠ったまま逝(い)った渡橋さんは、緩和ケアを受けるにあたり波多江さんあてにこう書いていた。「生を受け、与えられた寿命まで生きる、それでいいのだろうと思います。精一杯(せいいっぱい)生きるのではなく、与えられたままにただ生きればいいんだと思います」(本書所収)。

 木星舎。1600円(税別)。

 (編集委員・田川大介)

=2007/08/26付 西日本新聞朝刊=
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