『女を磨く ココ・シャネルの言葉』 高野てるみ著 (マガジンハウス・1575円)

『女を磨く ココ・シャネルの言葉』 高野てるみ著 (マガジンハウス・1575円)
十代でシャネルという名称の香水やバッグの存在を知り、二十代で香水ぐらいは買え、つけかたが下手なのでかえって異臭を放つこととなり、三十代ではブランド物を持つ女のひとたちを、「似合わねえなあ。みんないっしょが安心なんだろうけど」とどこかで馬鹿(ばか)にし、四十代の現在、とうとう縁はなかった。がしかし、ブランド品のなかでもシャネルはほかとちがった、ひときわ輝く存在で、興味はないんだがなんだかここまでつづいてきた歴史や品の良さをわたしはかんじています。
で、この御本を読み、ココ・シャネル自身が稀(まれ)に見る素敵(すてき)さだったんだというのは、わかったのだった。このフランスの生身の女性の、圧倒的なビジュアル、彼女の周辺。その口にした数々の言葉。すべての女性をうならせ、黙らせるような。
「体の動きは背中にいちばんよく現れる。すべての動作は背中からスタートするのよ」「香水はあなたがキスしてほしいところにつけなさい」「家で待つだけの女になってはいけない」
あんまりこんなことばかり言われると、日本の女性はますます萎縮(いしゅく)しちゃうかもしれないけど。
このひとと恋愛関係に陥った男性群は、さぞかし潤いのある人生だったことだろうなあ。ほんとうに女の良さ、異性の魅力、不思議さを知ったことだろうなあ。骨格のしっかりしたスリムなココ・シャネルさん、下腹が永遠に出ない体形をおばあさんになるまで保っていたとか。わたしとしては、女性の下腹はふっくらしていないと好きじゃない。そこはいずれ赤ちゃんを守るためのおふとんだから。そして成長してゆく子どもが、母のそのおなかに抱きついたときのあたたかさやわらかさって、必要。役目が終わればペタンコになればいい。すこし白いものが混じった髪をまとめ、かっちりしたスーツや艶(なまめ)かしいドレスを着、高いヒールをカツカツと鳴らして颯爽(さっそう)と歩く。そうしてその細いウエスト、今度は、いまから会いにゆく男のため、ミルクを欲しがってる子犬のような、わたしを待つかわいい男一匹に、ぎゅっと抱きよせられるためのものとなるのよ。オホホ。
男にはわからない世界があってもいい。女は努力。言わぬが花。秘密主義。そっちのほうが断然、おたがい、生きがいにつながる。
=2010/02/14付 西日本新聞朝刊=
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