クローゼットの奥にダブルのスーツが眠っている

 クローゼットの奥にダブルのスーツが眠っている。濃い緑で肩パッド入りのゆったりめ。内ポケットにはDCブランドの名がある。30年近く前に購入したお気に入りで、いまだに捨てられないでいる。

 かつて日本中が浮かれたバブル景気の気配が最近、じわりと漂い始めている。雇用は好調で都心部を中心に地価は上昇傾向、株価や国の来年度税収に至っては「バブル期並み」という。当時流行したファッションやダンスも、若い世代に再燃の兆しを見せる。

 バブル世代の一人として、あの高揚感に懐かしさは覚える。しかし、その後の崩壊ぶりを目の当たりにしてきただけに懸念もしている。

 緑のスーツ以上に愛着のある当時の歌がある。酒は1日2杯(年平均で)。目立たぬように、はしゃがぬように。似合わぬことは無理をしない。周囲に流されることのない、そんな「時代おくれ」の人でありたい、と年の初めに思う。 (前田英男)

=2018/01/01付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]