こんな映画みたいな話があったのか

 こんな映画みたいな話があったのか。記者の原稿を読みながら驚いた。1923年、福岡県うきは市の山村に、地元の青年医師、安元知之率いる農民劇団が誕生した。大正期の貧村。読み書きもままならない団員もいたが、安元の情熱的な指導で劇団は評判となり、地元にギリシャ式の野外劇場まで造ってしまう。

 ところが、劇場完成から間もなく安元が病死。リーダーを失った劇団は活動を停止し、劇場は一度も使われることなく、土の中に埋もれた。それから90年。地域おこしの中で劇場が掘り起こされ、ほぼ当時の姿で復元されたのだ。

 ロマンあふれる物語を、ここで終わりにさせてはならない。安元が果たせなかった演劇の夢。筑後地方は、久留米大付設高(同県久留米市)の演劇部が全国高校総合文化祭で日本一になるなど高校演劇の盛んな地でもある。復元された劇場に命を吹き込む、現代の安元が出てきてほしい。 (中野剛史)

=2018/02/02付 西日本新聞朝刊=

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