「物言えば唇寒し」の霞が関

 よかれと期待したのに成果が上がらず、想定外の悪い結果になることがある。公務員制度改革もその一例なのか。

 福田康夫元首相が共同通信のインタビューで、安倍晋三政権下の「政と官」の関係について「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている」と批判した。3日付の本紙朝刊に掲載された。

 政と官のあしき関係を生むと福田氏が指摘したのが2014年に公務員制度改革の柱として発足した内閣人事局だ。府省庁の幹部約600人の人事を一元管理する。省益優先の縦割り行政打破が狙いだった。その狙いは正しい。

 しかし当初から、官邸の意向を忖度(そんたく)する官僚が増える懸念があった。獣医学部新設の加計(かけ)学園問題や国有地格安売却の森友学園問題の経緯は、懸念が現実のものになっていることをうかがわせる。

 政と官の現状を象徴する出来事があった。加計学園問題を巡り文部科学省内で確認された文書の管理が不適切だったとして、内閣改造で退任前の松野博一前文科相は戸谷(とだに)一夫事務次官ら幹部官僚3人を口頭で厳重注意した。

 管理不適切とされたのは、内閣府から獣医学部新設が「総理のご意向」などとして速やかな対応を迫られたとする一連の文書とみられる。国民の政権に対する不信感を増幅させるような文書を残し、メディアを通して国民に知れ渡ったことの監督責任を問うたということだろう。

 一方、森友学園問題の国会審議で「交渉記録は全て廃棄した」と疑惑追及の“防波堤”となった財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は国税庁長官に昇進した。

 森友問題とは無関係の昇進との声もあるが、官僚は誰のために働くのか考えさせられた。無論、特定の政治家を守るために働くのではない。

 「1強」政権は人事や処分を通して官僚に「物言えば唇寒し」と思わせていないか。公務員制度改革に欠陥があるのならば、「人心一新」したという改造内閣で見直してもらいたい。 


=2017/08/07付 西日本新聞朝刊=

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