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旧産炭地に一流の芸術作品 田川市の中村美術館 横山大観ら1200点所蔵 [福岡県]

中村美術館内から望む中庭。周囲には緑が広がる
中村美術館内から望む中庭。周囲には緑が広がる
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横山大観の「黎明」と中村昌幸支配人
横山大観の「黎明」と中村昌幸支配人
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玄関口で来館者を迎える北村西望のブロンズ像「若き日の信長」
玄関口で来館者を迎える北村西望のブロンズ像「若き日の信長」
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広々とした1階ロビーでは入館者に無料でコーヒーも振る舞われる
広々とした1階ロビーでは入館者に無料でコーヒーも振る舞われる
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 田川市の石灰石採掘場の横に、「九州でも5指に入る私設美術館」と評判の施設がある。その名も「中村美術館」。コレクションは洋画、日本画に加え、彫刻、陶磁器、掛け軸、硯(すずり)などの名作約1200点に上るという。教科書にも登場するほど有名な作品もあると聞き、訪ねてみた。

 飯塚市から、国道201号飯塚庄内田川バイパスを東へ。筑豊烏尾トンネルを抜けた右手、静かな緑の中に美術館がある。「ゆっくりして行ってください」。大きな門をくぐると、支配人の中村昌幸さん(49)が出迎えてくれた。

 玄関ロビーに足を踏み入れると、見覚えのある作風のブロンズ像を見かけた。「これは長崎市の平和祈念像を制作した北村西望の作品『若き日の信長』です」と中村さん。風になびく髪や布の質感が細部まで表現されていて、足を止めて見入ってしまう。

 所蔵品の多くは、中村支配人の伯父で、オーナーの中村己義さん(88)が私財を投じて集めた。1階の広々としたロビーには、1880~1910年代のアールヌーボー期を代表するガラス工芸家、エミール・ガレや、ドーム兄弟の精巧な陶磁器が並ぶ。色彩が豊かで心を和ませる展示は「己義さんが好んだ芸術家」という。

 「2階の展示場には教科書に出てくるような作品もあります」。中村支配人が案内してくれたのは、近代日本画の確立に貢献した横山大観の「黎明(れいめい)」。静けさと力強さを併せ持つ画風に思わず息をのんだ。雪舟や円山応挙といった、日本画の歴史に足跡を残した画家たちの作品も並ぶ。

 なぜ、石灰石採掘場の近くにこの美術館が-。中村支配人によると、この地にはかつて、筑豊の石炭産業を支えた三井鉱山田川鉱業所があったという。閉山後の1963年、炭鉱離職者対策で「三井鉱山セメント田川工場」が開業。中村美術館は同工場の事務所として使われていた建物だった。

 2004年に同工場が閉鎖。翌年、地元でセメントをはじめとする建築資材を製造販売する中村産業が跡地を買い取った。同社は「石炭産業やセメント産業の盛衰を物語るこの地に、今まで田川になかった施設をつくりたい」と08年、本格的フランス料理が楽しめるレストランや旬の食材を使った料亭、同美術館を備えた複合施設「池のおく園」を開園。10年には秋篠宮さまも訪れた。

 「旧産炭地のイメージが根強く残る田川の玄関口を華やかなイメージで迎えたい」と、現在では四季に応じて展示を入れ替えている。開館から9年。市外からの来館者が多い一方で、地元でまだ知らない人もいる。中村支配人は「全国でも珍しい作品を見ることができる。地元に文化が香る展示を今後も続けたい」と話す。芸術の秋。田川の“迎賓館”で美と食をゆったり楽しむのもいい。

 中村美術館 福岡市中心部から車で約1時間。国道201号筑豊烏尾トンネルを通過後、関の山の交差点を右折。田川市弓削田の「池のおく園」内にある。午前10時~午後6時(入館は同5時半)。入場料は大学生以上800円、中高生300円、小学生200円。木曜休館。

=2017/10/17付 西日本新聞朝刊=

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