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NASAで働く日本人 不採用に1年後に夢つかむ 福岡市出身の石松さん [福岡県]

石松さんが勤めるNASAジェット推進研究所には、惑星探査機の模型などが展示されている。事前許可を受ければ見学できる
石松さんが勤めるNASAジェット推進研究所には、惑星探査機の模型などが展示されている。事前許可を受ければ見学できる
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カリフォルニア州にあるジェット推進研究所
カリフォルニア州にあるジェット推進研究所
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NASAの一員になって約5カ月。さまざまな宇宙研究に携わる石松さん
NASAの一員になって約5カ月。さまざまな宇宙研究に携わる石松さん
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石松さん愛用のノートパソコンや手帳
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 火星の生命の痕跡を探る-。米航空宇宙局(NASA)の壮大な計画に携わる日本人研究者がいる。福岡市中央区出身の石松拓人さん(35)。子どもの頃から宇宙に憧れ、昨年、難関を突破して採用された。NASAで成果を挙げた先に、福岡と宇宙を結ぶ夢を描く。 

 石松さんは昨年9月から、カリフォルニア州にあるNASAのジェット推進研究所で働く。NASAで外国人が正規雇用される唯一の研究所。約6千人の職員のうち、日本人はわずか10人程度だ。

 石松さんが関わるのは2026年の火星探査計画。ロケットに搭載した無人探査機で、火星の地表の土や石を回収し、地球に持ち帰って生命の痕跡を調べる。土や石は20年に別の探査機が集める。

 火星の地表は大小の岩石や凹凸があり、硬さも一様ではない。研究チームは、探査機が土や石を回収するのに必要なプログラムを開発。探査機を無事に着地させ、正確な作業ができるように、着地点ごとに最大で14万4千通りの走行ルートをシミュレーションする。

 「1日に30メートル進むのがやっと。順調にいっても1日200メートルです」。探査機が難しい地形に直面すれば、画像データを基に、対処するための指示を地球から出す。気が遠くなるような緻密な作業が、石松さんの研究の半分を占める。

 ほかにも、地球観測衛星の安全性審査や、宇宙探査機が自分で故障を検知する自律システムを開発している。NASAの勤務経験が浅いため、あえて多くの仕事を担い、人脈や信頼関係の構築に努める。

 NASAのプロジェクトは職員が提案し、上層部が採用すれば予算が付く。その過程は、まるで就職活動のようだという。関われる研究がなければ、退職せざるを得ない。厳しい競争の世界だ。

   ◇   ◇

 小学生のとき、宇宙への憧れが芽生えた。修猷館高(福岡市)時代に見た映画「アルマゲドン」に触発され、登場人物が在籍した米マサチューセッツ工科大への留学を意識するようになった。

 東京大で航空宇宙工学を専攻し、修士課程を修了。同期生の多くが就職する中、石松さんは「周りに流されてきた今までの自分」を改めて「わくわくする道」を選んだ。06年からマサチューセッツ工科大の大学院に進み、博士課程修了前の13年にジェット推進研究所の採用試験を受けた。

 結果は、最終面接で不採用。担当者は米国の永住権を取得したときに「状況が変わっているかもしれない」と告げた。研究所では永住権がないと、使える建物も入手できる情報も限られる。採用担当者の本意は分からなかったが、石松さんは大学院に残り、永住権を申請することにした。

 相談した弁護士からは、同じ大学以外の5人から推薦状をもらうように求められた。書類をそろえるだけで1年。その後は、NASAを刺激する論文と大胆な行動で重い扉に挑んだ。

 「火星に人を送るときは月を経由した方が費用が少ない」。石松さんの論文は「地球と火星の直接往来」を基本とするNASAの方針と対立し、研究者の注目を集めた。

 「敵陣」にも乗り込んだ。友人の協力を得て、ジェット推進研究所で約30人を前に講演。「月の地下の氷を水素と酸素に分解し、液体水素と液体酸素をロケットの燃料にする」と、月を経由する利点を説いた。

 昨年、永住権の取得を研究所に伝えると、待っていた言葉が返ってきた。「今すぐに採用する」。ついにNASAの一員になった。

   ◇   ◇

 マサチューセッツ工科大での研究は通算10年に及んだ。その間に結婚し、2人の子が生まれた。「就職していく周りを見て、焦らないのがよかった」。石松さんはのんびりした性格が幸いしたと考える。

 次の目標は有人宇宙飛行に携わること。NASAで担当する研究所は米国人しか採用しない。ならば-。「いつか宇宙ベンチャー企業を立ち上げたい。それも福岡で」

 困難があっても、歩きたいのは「わくわくする道」だ。

 (写真はいずれも石松さん提供)

音楽を聞きながらパソコンに向かい

 石松さんは職場で、米マイクロソフト社のノートパソコンを使用している。かなりの高性能で、同僚とプログラムを共有して共同開発したり、大規模なシミュレーションをしたりするのに役立てている。研究アイデアやミーティングのメモはNASAのロゴ入り手帳に書き込み、ヘッドホンで音楽を聞きながらパソコンに向かう。好きな曲はロックバンド「ミスターチルドレン」の「Starting Over」と「未完」。

=2017/02/14付 西日本新聞朝刊=

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