飲酒運転ゼロ遠く、福岡市職員 海の中道3児死亡事故から11年 [福岡県]

福岡市の業務用パソコンは、ログインのたびに飲酒運転撲滅へのメッセージが表示される
福岡市の業務用パソコンは、ログインのたびに飲酒運転撲滅へのメッセージが表示される
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 福岡市東区の「海の中道大橋」で3人の幼児が犠牲になった市職員による飲酒運転事故から、今月25日で11年となる。市は職員研修を徹底するなど飲酒運転撲滅対策を続けてきたが、今年も市外郭団体に出向中の職員が飲酒当て逃げ事故を引き起こし、「ゼロ」にはほど遠い。特に、飲酒運転と関連性が指摘されるアルコール依存傾向のハイリスク職員をどう指導し抑止していくか。今なお手探りの状態が続く。

 5月29日朝の出勤時、市住宅供給公社の男性職員は前日から未明にかけて飲んだ酒が残った酒気帯び状態で車を運転し、当て逃げ事故を起こした。呼気からは、基準値の約6倍に当たるアルコール分が検出された。男性職員をよく知る市幹部は「もう少し踏み込んで対応を取っていたら、未然に防げたのかもしれない」と残念がる。

 市は3児死亡事故を受け、健康診断や専用のチェックシートを基にアルコール依存傾向が高い職員をリストアップし、上司や保健師が専門医の受診を勧めたり健康指導したりする仕組みを導入していた。だが-。

 市は出向している職員の管理を徹底しておらず、この男性職員は「リスト」から漏れていた。事故以前にはプライベートでかかりつけの医師からアルコール専門医の受診を勧められていたものの、上司に報告していなかったという。

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 現在、市が行う飲酒運転撲滅対策は多岐にわたる。

 一つの柱は「ムチ」だ。懲戒処分の指針を改訂し、飲酒運転は即時、懲戒免職と厳罰化した。退職金が支払われず、次の職探しも困難になるなど、失うものの大きさを職員が疑似体験する研修も新たに導入した。職員の業務用パソコンはログインするたびに「飲酒運転撲滅の誓い」と題するメッセージが表示され、危機意識とモラルを喚起するようになっている。

 飲酒絡みの不祥事が続いた2012年には、高島宗一郎市長が1カ月間の「自宅外禁酒令」という荒療治を行い、全国的な話題にもなった。

 もう一つの柱は、職員がアルコールの知識と適正な飲酒量・習慣を学んで身に付ける研修。二重三重にアルコール依存傾向のある職員を把握し、管理していく狙いがある。

 例えば毎年度、全職員に「飲み始めるとやめられなかったことがあるか」「飲酒で前夜の出来事が思い出せなかったことがあるか」などの質問に答えていくチェックシートの提出を義務付けた。これとは別に、飲酒日記や保健師の助言により酒量を段階的に減らす「HAPPYプログラム」も導入。市によると9年間で延べ約200人が参加し、6割の人が飲酒量を減らせたとしている。

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 ただ、5月に飲酒当て逃げ事故を起こした男性職員もHAPPYプログラム経験者。13年には、市と家族が連携してアルコール依存症の治療に取り組んでいた職員が酒気帯び運転事故を起こしたケースもあった。

 3児死亡事故以降、市関係者による飲酒運転事案は計13件。市役所内外から対策の形骸化やマンネリ化を危ぶむ声が聞こえてくる。市は出向中の職員の指導、管理を徹底するよう指示するなど撲滅に向けて苦心する。市人事課の仲原善信課長はこう強調する。「飲酒運転を撲滅する特効薬はない。やれる対策を地道に続けるしかない」

=2017/08/20付 西日本新聞朝刊=

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