滑走路増設か新空港建設か。福岡県の麻生渡知事が26日に地元として態度を表明する福岡空港の過密化対策。その行方を「海の正倉院」と呼ばれる宗像・沖ノ島と関連遺産群(同県宗像、福津市)の世界遺産登録を目指す人たちが注視している。新空港案なら遺産群から10キロ足らずの新宮町沖の海上で大規模開発が行われ、古代から守り継がれる海洋信仰遺跡としての評価に影響を及ぼす恐れもあるためだ。
沖ノ島と関連遺産群は昨年9月、世界文化遺産の国内候補として暫定リスト入りを果たした。
古代、航海の安全を祈る国家的祭(さい)祀(し)の場だった玄界灘の孤島・沖ノ島と沿岸の関連遺跡。島は女人禁制や一般人上陸禁止などのタブーが今も残り、漁業者たちの信仰の対象となっている。文化庁は「日本固有の自然崇拝思想の原初的な形態を残すのみならず、その祭祀行為が現在も継続している資産」と評価した。
ただ、検討課題の1つに「今なお固有の海洋信仰として継承されている文化的伝統の無2の物証であることを明確化すること」を挙げていた。
世界遺産に詳しい民間シンクタンク「世界遺産総合研究所」(広島市)の古田陽(はる)久(ひさ)所長は「沖ノ島を中心とした海洋信仰に関する古代のタブーや習俗が生きていると説明する一方で、周辺海域で大規模開発が行われれば、登録条件となる真実性や完全性を疑問視される可能性がある」と説く。
国土交通省九州地方整備局の空港PT室によると、新空港案は新宮沖に約510ヘクタールの埋め立て地をつくり、3000メートルの滑走路2本を建設する。
滑走路増設案より発着処理能力は年間3万回多く、24時間利用も可能。ただ、工期は9年(増設案7年)、費用は9200億円(同2000億円)の巨大事業になる。
「県などの地元自治体から暫定リスト登録の申請があった際は、海上空港建設案の情報は入っていなかった」。文化庁の世界文化遺産特別委員会で審査を担当したワーキンググループの座長、金(きん)田(だ)章裕・人間文化研究機構長は打ち明ける。
ユネスコ(国連教育科学文化機関)への具体的な登録申請範囲は未定で「海上空港建設が大きな障害になるかもしれないし、ならないかもしれない」と金田座長。その上で「海洋信仰遺産の近くで大規模開発が行われると、審査機関への説明がつかなくなる可能性はある」と指摘する。
これに対し、空港PT室は「1月まで行ったパブリックインボルブメント(市民の意見を計画に反映させる仕組み)で懸念の声が寄せられたことはあるが、まだ文化庁などと協議できる段階でない。必要があれば対応を検討する」という。
古田所長は「遺産保護と開発は相反する行為。空港建設が登録に影響しないか、双方の関係機関同士で十分に話し合うべきだ」と話している。 (社会部・坂本信博)
=2009/03/06付 西日本新聞夕刊=
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