量刑 あなたならどうする?
《1》結果責任 命奪ってなぜ執行猶予

読み終えた広瀬小百合さん(58)=佐賀県鳥栖市=は11年前の事件を振り返り、釈然としない気持ちになった。「息子を殺した犯人もボクシングをしていた。でも殺人罪じゃなかった」
広瀬さんの次男恒平さん=当時(20)=は1998年8月、熊本市内のアーケード街を友人と自転車で通行中、酒に酔った若い男2人組に突然、殴るけるの暴行を受けた。
5日後、外傷性くも膜下出血で死亡した。2人組は逮捕、起訴されたが「殺意はなかった」として、罪名は殺人よりも刑の軽い傷害致死だった。
加えて、有罪だったが、判決に執行猶予が付いた。「初犯」「自首」「手数が少ない」が理由だった。
裁判で2人がボクシングをしていたことも知った広瀬さんは「殺人だろうが、傷害致死だろうが、息子が殺された事実に違いはない。なのに、どうして執行猶予だったのか」と、今も納得がいかない。
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法律は、殺人と傷害致死の罪を明確に区別している。命を奪った結果は同じでも、殺意のある故意ならば殺人、そうでなければ傷害致死だ。
量刑も異なり、殺人は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」だが、傷害致死は「3年以上の有期懲役」で、併合罪の場合でも最高で懲役30年。
法律のプロの間にも「故意や過失にかかわらず被告の責任は同じ、という考えが一般的な市民感情」(福岡県弁護士会の船木誠一郎弁護士)との見方はあるが、現実の裁きは同じではない。
最高裁によると、全国の2007年の一審判決で、殺人罪の量刑は懲役10年以上が6割を占めたのに対し、傷害致死罪の懲役10年以上は5%で、半数は懲役5年以下、8%には執行猶予が付いた。
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裁判所と市民との間に罪や罰に対する考え方の壁があると感じている広瀬さんは03年から九州の少年院で自分の体験を語る活動を始めた。「家族を殺された遺族の心情を知ってほしい」と考えたからだ。
少年たちからも「どうして実刑じゃないの」と、恒平さんの裁判に対する疑問の声を聞くことがあるという。
5月から始まる裁判員裁判には法律のプロではない市民の意見が厳罰化を招くと懸念する声もあるが、広瀬さんには期待するものがあるという。「人の命を奪えば刑務所に行くというのが私の常識。それが生かされる裁判になってほしい」
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最高裁は、裁判員制度の導入目的を刑事裁判への市民の良識の反映としている。裁判員はプロの裁判官と対等の立場で議論し、有罪か無罪かに加え、量刑の決定にも参加する。しかし、量刑の幅は広く、その基準も分かりにくい。何をどう判断するのか、裁判員は難しい選択を迫られる。
=2009年1月20日付 西日本新聞朝刊=


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