裁きのあと 刑罰を考える
《5完》共生 再犯リスク低減議論を

行進しながら刑務作業の工場に入る受刑者。刑務所でどのように社会適応力を養うかも大きな課題だ=熊本市の熊本刑務所
34歳で衆院議員になった。だが、秘書給与流用の詐欺罪で2001年2月、懲役1年6月の実刑判決を受け、仮釈放されるまでの約1年2カ月、主に黒羽刑務所(栃木県)に服役した。
刑務所では、知的障害や精神疾患がある受刑者たちを集めた工場で食事やトイレの介助などをし、重い障害があるのに福祉とつながっていない受刑者の多さに驚いた。
障害に応じた矯正プログラムはなく、刑務作業は単純な作業が与えられるだけ。「必要な処遇を受けないまま出所しても社会復帰につながらず、再び罪を犯して服役した受刑者もいた」
山本さんは出所後、刑務所の中の体験をもとに「獄窓記」や「累犯障害者」を著した。
刑務所では障害のない受刑者も懲罰や仮釈放に影響力のある刑務官を恐れ、ただ指示に従うようになっていたという。
播磨の矯正プログラムでは、受刑者が誘惑を断る術を学ぶなどコミュニケーション能力を磨く訓練にも力を入れている。山本さんは「主体的に考えさせることで出所してからも社会に適応できる」と語る。
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元受刑者に対する社会の目は、刑務所で罪を償っても厳しい。
北九州市小倉北区に6月29日、国が全国で初めて開所した「北九州自立更生促進センター」。身寄りがないため刑務所から仮出所できない受刑者を受け入れ、社会復帰を支援する更生施設だ。
法務省は当初、福岡や京都、福島3市にセンターの設置を計画。しかし「治安が悪化する」と住民から猛反発を受け、いずれも計画を凍結した。
北九州市でも「不安で歓迎できない」といった意見は今もある。法務省は防犯灯の増設や県警への夜間パトロール要請など、いくつもの約束をして開所にこぎ着けた。
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世論の犯罪に対する不安の高まりを背景に、法曹の現場では厳罰化が進む。有期懲役の実刑率は07年41・8%で、この10年間で約5ポイント増。逆に同年の仮釈放率は50・6%で3年連続で減少した。
常磐大学大学院の諸沢英道教授(被害者学)は「近年の傾向は厳罰化ではなく適正化。これまでが軽かった。もっと量刑に被害者感情を反映させていい」と主張する。
一方、九州大学大学院の武内謙治准教授(刑事政策)は「受刑期間を長くすれば、社会と離反して再犯リスクが高くなる」と懸念する。
07年の刑法犯に占める再犯率は約40%。高齢者の犯罪や生活困窮を動機とした再犯も目立つ。
刑期が長期化し、高齢で出所してもうまく人間関係を築けず、仕事も持てず、再び犯罪に手を染めて刑務所に戻る「負の循環」をどうすれば断ち切れるのか。
武内准教授は「受刑者の大半はいずれ社会に戻る。彼らをどう受け入れ、共生していくのか。一人一人の市民が真剣に考える必要がある」と話す。 =おわり
(報道センターの安部鉄也と塩入雄一郎が担当しました)
=2009/07/11付 西日本新聞朝刊=
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