西日本新聞

裁判員司法 試行続く法廷

《上》直接証拠 現場の様子を生々しく

2009年05月02日 14:03
 2月12日午後、東京地裁八王子支部の法廷。検察官が「次は画像分析結果です」と述べると、大型モニターには、悲鳴を上げながら書店内を逃げ惑う女性店員や刃物を持った男の姿が映し出された。

耳に残る叫び声

 防犯ビデオの映像が法廷で再生されたのは、東京都八王子市の駅ビルで昨年7月に起きた無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた会社員菅野昭一被告(34)の初公判。

 数十秒だったが、現場の様子を生々しく伝え、傍聴人の1人は「迫力に圧倒された。きゃーっという叫び声が耳に残っている」と述べた。

 菅野被告は表情を変えることなく、モニターを見ていた。弁護人は「傍聴人にまで見せることに全く問題がないとは思わないが、真相究明のためには必要な証拠だという検察側の主張も理解できる」と語った。

 東京地検八王子支部の検事は「裁判員裁判が始まると、こうした分かりやすい直接証拠を使うケースは増えるだろう」と話している。

「やりすぎ」批判

 東京都江東区のマンションで2部屋隣の女性を殺害し、遺体を切断してトイレに流したとして、殺人や死体損壊などの罪に問われた星島貴徳被告(34)の1月13日の初公判では、検察官が下水道などから見つかった肉片172点、骨片49点の写真をすべて大型モニターに映し出した。

 翌日の公判は、遺体切断の経過をマネキンで再現した画像。切断されたマネキンの足の断面は赤く塗られていた。

 傍聴席にいた被害者遺族の女性が号泣して退廷した。その直後、星島被告は「絶対に死刑だと思います」と叫んだ。傍聴人の間からは「やり過ぎではないか」という声が漏れた。

 検察幹部によると、遺族の一部には写真やマネキンの映像を法廷に出すことを事前に説明し、了解を得ていたという。

 「批判もあろうが、今回の写真は犯罪事実を示す唯一の証拠であり、遺族の処罰感情の厳しさを示す根拠でもある。これまでも裁判官は見てきた証拠。裁判員に見せるべきではないという意見があるとすれば、それは違うと思う。判断する人には見てもらわなければならない」と検察幹部は述べた。

   ◇   ◇

 裁判員制度のスタートに向け、専門家ではない裁判員に「見て聞いて分かる審理」の実現が課題となっている。実際の公判で続く試行の様子をリポートする。

メモ ▼裁判員裁判の法廷 一段高い法壇は緩やかな弧(アーク)の形となり、裁判員6人と裁判官3人が座る。法壇から見た左右の一方に検察官、反対側に被告と弁護人。被告が拘置中の場合は刑務官らが同行する。検察官の隣に被害者や遺族、代理人弁護士が出廷するケースもある。検察側、弁護側双方の資料を映し出す大型モニターは一般的に検察側、弁護側の背後の壁に設置され、傍聴席からも見える。裁判官と裁判員の前には小型のモニターが設置されている。


=2009/03/20付 西日本新聞朝刊=
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