西日本新聞

はじまる裁判員・特集

【2009/05/15付特集】九州の市民に聞く 不安感と使命感と 「怖い。後で被告と会ったら」「感情に流されず真摯に臨む」

2009年05月19日 21:17
 「死刑になるような事件を担当するのは怖い」「短期間の審理で自分も正しく裁けるだろうか」-。裁判員に選ばれる可能性がある「候補者名簿」に記載された九州の市民は、それぞれ使命感や責任感、不安を胸に抱きながら制度の開始を迎えようとしている。

 「自分には関係ない」と思っていた大分市の会社員女性(22)のもとにも昨年末、名簿記載の通知が来た。「そもそも裁判に普通の人がかかわっていいのか。裁判官という職業を選んだ人がやればいいことなのに」と思ったという。

 その不安は今も消えない。「怖い。よほどの重罪じゃなければ被告も社会に出る。同じ地方に住んでいれば顔を合わせることもあり得る。守ってもらえるんだろうか」

 福岡県八女市に住む公務員男性(46)は通知を受けてから、裁判員制度について書かれた冊子や傍聴記を読むようになった。「義務ではなく権利として与えられた制度。生活の営みの中からわき出る疑問や意見を投げかけたい」と考えたからだ。

 裁判員に選ばれたらと思うと、山口県光市の母子殺害事件などが頭に浮かぶという。「今、厳罰化の流れがあるように思うが、参加したら感情に流されないように真摯(しんし)に臨みたい」。こう前向きにとらえる一方で「人の命を奪う死刑を自分が判断できるかどうかは分からない。短い審理で冤罪(えんざい)が防げるのかという疑問もある。終身刑の創設が必要ではないか」と感じているという。

 「普段の生活でも自分の言動に責任を感じるようになった」と語るのは北九州市門司区の元会社員男性(67)。「裁判を受ける被告のためにも、裁判員が不安な気持ちを出してはいけないと思う。証拠や証言を踏まえ、自分が正しいと信じる考えを責任持って発言すれば、結果がどうなっても悔やむことはない」

 各地裁が行った模擬裁判で裁判員役を体験した人の多くは、制度の意義を実感しているようだ。

 福岡地裁で傷害致死事件の模擬裁判に参加した福岡市中央区の会社員加藤善弘さん(43)は「別世界だった裁判で、ものが言える社会に変わった、自分の意見も力になる、と実感した」という。裁判員として法廷に臨みたいと考えるようになった。

 ●ワードBOX=裁判員裁判の対象事件

 対象は(1)死刑または無期懲役・禁固に当たる罪=殺人、強盗致傷、現住建造物等放火、覚せい剤取締法違反の営利目的輸出入など(2)故意に被害者を死亡させた罪(裁判官1人で担当できる事件は除く)=傷害致死、危険運転致死、特別公務員暴行陵虐致死など。2008年の対象事件は全国で2324件だった。裁判員裁判は地裁の本庁50カ所と主要支部10カ所で行われる。九州は県庁所在地の本庁7カ所と小倉支部(福岡)の計8カ所。


=2009/05/15付 西日本新聞朝刊=
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