裁判員司法 被害者参加の波紋
《4》時効撤廃 新たな課題に

「宙の会」の結成を発表した記者会見。中央が宮沢良行さん=2月28日、東京都千代田区
▽「国民の評価」注目
宮沢さんの父良行さん(81)は今年2月28日、時効制度撤廃を求める「宙(そら)の会」を結成し「人を殺した犯人が時効後にのうのうと暮らしていける社会は、なくした方がいい」と会見で述べた。
「被害者は一生苦しむのに、加害者に時効があるのは不公平だ」。全国犯罪被害者の会代表幹事の岡村勲さん(80)は昨年12月4日、森英介法相に面会した際、殺人など重大事件の時効撤廃を陳情した。
岡村さんたちが求めてきた被害者参加制度が実現し、時効撤廃が被害者支援の新たな課題となっている。法務省関係者は「被害者の支援を続けるが、裁判員が国民の良識を示すとすれば、裁判員裁判で被害者や遺族の意見がどう評価され、判決に反映されるか注目している」と話す。
▽NZ、厳罰に歯止め
「ニュージーランドでは1999年ごろから、犯罪被害者の個人的な経験が何より重視されるようになり、犯罪が減っているのに厳罰化が進んだ」
3月21日に京都・龍谷大で開かれた「グローバル化する厳罰化とポピュリズム」と題するシンポジウムで、同国ヴィクトリア大の教授が報告した。同国は市民だけで被告の有罪・無罪を決める陪審制度。
教授によると、99年当時、人口10万人当たりの受刑者は150人だったが、07年9月に200人を超えた。欧米諸国では米国に次ぐ高率で、定員超過の刑務所がトラックに受刑者を収容していたことなどが明らかになり、厳罰傾向に歯止めがかかりつつあるという。
裁判員制度と同様、市民と裁判官が一緒に判決内容を決める参審制度を採るフィンランドの国立司法研究所の研究者は、10万人当たりの受刑者が50年代以降ほぼ一貫して減り、日本並みの60―70人となったことを紹介。「福祉国家は『犯罪との戦い』より『貧困との戦い』を重視する。連帯が基本で、犯罪者も排除しない。リスクはみんなで負う」と米国などとの違いを強調した。
=おわり
◇ ◇
■公訴時効 犯罪行為が終わった時点から一定期間が経過すると、公訴の提起(起訴)を許さない制度。①時間の経過で証拠が散逸し、公正な裁判ができない②処罰感情が薄まる③捜査態勢を維持できない―などが理由とされるが、証拠のDNA鑑定の精度が飛躍的に上がったことや被害者の意見が重視されるようになったことが撤廃論の背景にある。法務省は勉強会を設け、制度の見直しを検討している。2005年1月施行の改正刑事訴訟法で時効期間が延長され、死刑に当たる罪は15年から25年になった。
=2009/05/19付 西日本新聞朝刊=
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