
恐竜や火の鳥など迫力のバルーンアートで施設の入居者に笑顔を届ける浜田歩さん=福岡県八女市の老人ホーム「サンホームまつざき」
丸い赤鼻がトレードマークの「マルコ」が現れた。軽快なBGMに合わせて、赤や青の風船をひねる。丸める。つなぐ。細長い風船がクマやウサギ、サルに姿を変えるたびに、拍手と歓声が部屋を包んだ。
福岡県八女市の老人ホーム「サンホームまつざき」。パーキンソン病で車いす生活の入所女性(67)は穏やかに笑った。「風船のプレゼントまでもらっちゃって、楽しかったなあ。ここにずっといると、つい心がふさぎがちになりますからね」
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福祉施設で暮らすお年寄りや子どもたちにバルーンアートを披露し、笑顔を届けるクリニクラウン(臨床道化師)。「ピエロのマルコ」を演じるのは浜田歩さん(26)=福岡市南区=だ。
バルーンアートは7年前、福岡市の福祉医療専門学校に在学中、友人に誘われ始めた。結婚式などで披露、楽しさに魅せられた。そんな折「パッチ・アダムス」というアメリカ映画に出会った。主役の医師を演じるロビン・ウィリアムズが道化師に扮(ふん)し、闘病生活を送る子どもたちをユーモアで励ます物語である。
「クリニクラウンの存在を知り、僕にも何かできるかもしれないって思いました」
卒業後、市内の社会福祉法人が運営する生活介護事業所に就職した。平日は障害者の生活介護支援員をしながら、休日はボランティアで福岡県内の福祉施設を訪ねる。これまで延べ100カ所で演じてきた。レパートリーは500種類。全長2メートルの恐竜も5分で仕上げる。
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筋ジストロフィーの患者が入院する病院を訪ねたときのこと。寝たきりの子どもたちの前で、ミッキーマウスやくまのプーさんそっくりの風船を作ってみせた。元気のなかった子どもの表情に笑みが戻り、身を乗り出すように瞳を輝かせた。ある老人ホームを再訪したときは、認知症のお年寄りが「ピエロのマルコ」を覚えていてくれた。
何かに興味を持つことや笑うことがこんなにも人にパワーを与えるものなのか。「驚くことばかり。こちらの方が元気をもらっちゃってる」
芸名は、シルクロードを旅した中世の旅行家マルコ・ポーロにあやかった。「呼ばれれば、どこへでも行く旅芸人のつもり。どこかでまた会えるという思いも込めて」。風船片手に今度はどこへ-。「マルコ」の思いは風船のように膨らんでいく。
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=2010/06/27付 西日本新聞朝刊=