西日本新聞電子版 1周年記念プレゼント

【花宗川の詩 八女筑後大木大川】(6)花宗窯 農が導いた実用の美

実用の美にこだわり続ける「花宗窯」の吉武和美さん
実用の美にこだわり続ける「花宗窯」の吉武和美さん
写真を見る
田畑に囲まれた筑後市西部を流れる花宗川
田畑に囲まれた筑後市西部を流れる花宗川
写真を見る

 電動ろくろのスイッチが入り、土の塊が静かに回り出す。陶芸家がそこに手を触れると、無機物に魂が吹き込まれていく。

 筑後市西部の井田に達した花宗川は見渡す限り広がる田畑の中をゆっくりと流れる。吉武和美さん(70)がこの地に「花宗窯」を開いて約40年。半農半陶の暮らしを続け、茶器や食器など実用にこだわった作品を手掛ける。

 吉武さんは早稲田大に在学中、博物館や美術館巡りの中で陶磁器に魅せられた。一念発起して帰郷、約400年の伝統を持つ高取焼(東峰村小石原)や唐津焼(佐賀県唐津市)の窯元で修業した。1976年、農家である実家に登り窯を築き、本格的に作陶を始めた。

 窯の名の由来はもちろん花宗川。「昔は花宗用水組合に市を通して税金(水利地益税)を払う仕組みになっていてね。お金を払うなら名前だけでも使わせてもらおうと考えてね」と冗談を飛ばす。「船小屋」などの名前も候補にしたが、やはり一番身近な川の名を選んだという。

 自宅周辺で米や麦、大豆を栽培する。素焼きに塗って光沢を出す釉薬(ゆうやく)に使うわら灰は、稲刈り後のわらや脱穀した後のもみ殻をきねで突いて使う。機械で角が丸くなるまですった粒子と違い、突いた粒子は角が残り、白く流れるような美しい乳濁した色となる。吉武さんにとって、農業と焼き物は「切っても切れない」ものだ。

 5年ほど前までは北大路魯山人(1883~1959)を意識して作陶していたが、今は誰にもとらわれない。もっと自由に創造の翼を膨らませる。土も瀬戸系のほか、青織部など全国から取り寄せ「高取焼、唐津焼の伝統は守りながら、自分の好きなように作っている」。ただ、ろくろへのこだわりは持ち続ける。「奥の深い世界。これからも極めていきたい」と思いを語る。

 東京の飲食店や京都のホテルなどからも注文があるという吉武さんの陶器。どっしりとした趣の作品もあれば、三日月や貝の形といった、しなやかな成型のものもある。それでいて、実用に適した作品群。その姿は、さまざまな顔を持ちながら、しっかりと生活に根ざしている花宗川に通じる物がやはりある。

=2017/10/08付 西日本新聞朝刊=

→電子版1周年記念!1万円分賞品券やQUOカードが当たる!!

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]