【産業医が診る働き方改革】<4>急な変革、ストレスに

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 通信機器販売会社の事業所でのお話です。3年前に他の事業所と併合され、社員は約120人から180人程度に増えていました。

 昨年4月の人事異動で中核部署の部長が代わりました。新部長は組織体制を大幅に変更。商品の領域ごとに独立していた六つの課が解体され、各課を分けていた仕切りも取り払われました。部が一体となって市場の動きに迅速に対応しようという方針を、明確な形に表したようです。

 長年、この職場を見てきた産業医は、組織の見直しの必要性は理解していました。同時に、あまり職場変革を急ぐと、社員は付いていけるのだろうかという懸念も抱きました。

 10月に入って、懸念が現実に。チームリーダー(課長)の1人が「適応障害」の診断書を提出し、休業に入ったのです。適応障害は特定の状況や出来事が耐えがたく、行動・情緒面に症状が現れます。1カ月ほど前から、表情に活気がなくなり、休憩時間もつらそうにしている様子を同僚に目撃されていました。

 2015年12月から義務となったストレスチェックを昨年8月に実施した結果、この部署では「高ストレス」と判定された社員の割合が他部署の2倍以上。高ストレスの社員は、産業医による面接指導が勧奨されます。産業医は社員の訴えに耳を傾けました。「指示命令系統が複雑化し、うまく仕事が回せない」「経験のない要請が増え、処理に時間がかかる」…

 どうやら新部長の狙いが浸透しておらず、逆に社員の負担感、ストレスを高めてしまっているようでした。新部長も思うように業務が進まないことにいら立ち、部下への命令が高圧的になって、パワーハラスメントに近い事態も起こっているようでした。

 斬新な職場の変革は働く人にとって刺激的で、職場が活性化することも多いようです。ただ、性急に進めると、適応できない社員が出て、職場全体の成果は落ちてしまうという皮肉な結果を生じがちです。産業医は、新部長の苦労をねぎらいつつ、もう少し緩やかな見直しができないものかと問い掛けました。

(廣尚典=産業医大教授)

=2018/02/12付 西日本新聞朝刊=

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