【産業医が診る働き方改革】<3>仕事が偏り、関係悪化

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 社員数200人ほどの印刷会社での話です。地域の大きな行事で使う印刷物を大量に受注したことで、近年にない繁忙期が1年近くも続いていました。当初は職場に活気をもたらしましたが、長引くにつれて不調を訴える社員が増加。この3カ月間で休業者が2人も出てしまいました。

 休業診断書の病名は、2人とも「抑うつ状態」です。人事担当者は、看過できない事態だと判断して、週に1度勤務している産業医に相談。業務が増えている部署を中心に、個人面接で健康状態を確認してもらうことにしました。

 産業医は、15人を3回に分けて面接しました。専門医の受診や休業がすぐに必要というわけではないものの、ストレスを強く感じ、疲労が蓄積している社員が他にもいることが分かりました。原因としては「人間関係が良くない」という声が多く聞かれました。

 確かに人間関係は、職場のストレスの代表的な原因であると、多くの調査で報告されています。上司と部下間、同僚間のサポートが少ない職場では、ストレスが高まりやすいことも知られています。

 ただ、ひと口で人間関係といっても、背景にはさまざまな問題が潜んでいます。問題をつまびらかにして改善できないと、解決にはつながりません。

 さらに聞き取りを深めていきました。すると、多忙化によって、それまでうまくいっていた役割分担にひずみが生じ、仕事量の偏りが大きくなり、部署や担当者の連携がぎくしゃくしている事実が明らかになってきました。これが「人間関係によるストレス」と表現されていたのです。

 産業医は職場の管理者に対し、それぞれの業務を明確化し、役割分担を見直すよう提案しました。一人一人の頑張りを褒め、ねぎらいの言葉を掛けてはどうかとも伝えました。管理者は提案を実践し、「忙しいのに、気配りができているね」「仕事が正確で安心できるよ」などと声掛けを徹底しています。

 その後も繁忙期は半年ほど続きましたが、精神的な不調を訴える社員は出ず、山を越えたようです。

 (廣尚典=産業医大教授)

=2018/01/09付 西日本新聞朝刊=

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