【産業医が診る働き方改革】<10>健診結果で職場改善

写真を見る

 産業医には、定期的に従業員の健康診断結果が届きます。ある工場で働く40代男性は、血圧が基準値を大幅に超え、体重も増加、血糖値も上昇しています。数年前から高血圧の薬を飲んでいましたが、私は急激な数値の変化が気になり、面談で最近の就業状況などを伺いました。

 男性は「自覚症状は何もなく、働くことには問題ありません。そもそも毎年の健康診断で病気を見つけられるのですか」と不満顔。ただ、話を聞くと、昨年度途中から業務内容が変わったため、暑熱環境や高所での作業が増え、残業は月50時間以上、付き合いの飲み会も多くなったようです。こうした変化は血圧上昇のリスクとなり、産業医としては就業状況が健康に影響した可能性を否定できません。

 早速、個別指導で「症状がなくても就業状況によっては持病が悪化することがあります」と説明。会社側には、暑熱対策の実施、できる範囲での高所作業の軽減を提言し、睡眠をしっかり取れるよう、残業を法定時間に収める工夫も促しました。

 その後、男性は深酒をやめ、ウオーキングなどの運動も少しずつ取り入れながら、生活習慣の改善に努力しました。体重は減り、最新の健診結果では数値の改善が見られました。

 健康状態は刻一刻と変化し、症状として現れたら病気はかなり進行していることもあります。特に、就労状況が一因となっている場合、無症状の時点で本人が生活習慣改善を意識すると共に、会社が労働環境をより良く管理すれば、病気の進行を予防できることも多いのです。

 つまり法定健診は、必ずしも病気の発見だけを目的としているわけではありません。安全に健康を損なうことなく働けるように適切な作業環境・方法をサポートする「就業措置」は、産業医の重要な役目。健診は就業措置の情報源となるのです。

 今後、職場に高齢者が増えるのに伴い、病気を治療しながら働く人の割合も増えていくでしょう。万全の体調でなくても、それぞれの健康状態に照らして、いかに働きやすい環境を整えるかが、大事になってくるのではないでしょうか。

(大神明=産業医大教授)

=2018/04/16付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]