西日本新聞

NIE全国大会 ネット社会を生きる力に

2010年7月30日 10:27 カテゴリー:コラム > 社説

 「ニュースペーパー・イン・エデュケーション」の三つの頭文字をとって、NIE(エヌ・アイ・イー)と言う。教育に新聞を活用する取り組みのことだ。

 日本新聞教育文化財団が主催するNIE全国大会が、29日から2日間、熊本市の崇城大学市民ホールなどで開かれている。全国大会は15回目。九州では5年前の鹿児島大会に次いで2回目になる。

 新しい学習指導要領が小学校では来年度から、中学校でも再来年度から導入されるのを前に、ことしはNIEへの注目度が高まっている。新指導要領が、各教科における「言語力の充実」を重視し、その一環として国語教育などで新聞の活用を掲げているからだ。

 これを受けて、来春から小学校で使われる教科書にも、新聞やテレビなどを素材に、メディアリテラシーを養うための学習内容が登場している。メディアリテラシーとは、新聞やテレビなど多様なメディアがもたらす情報を主体的に読み解き、活用する能力のことである。

 新教科書では、インターネットの活用方法や危険性に触れた記述も増えており、ネット時代の子どもたちの思考力や判断力、表現力の育成に重点が置かれている。そのようなメディアの「読み解き能力」をはぐくむうえで、教育に新聞を活用するNIEの役割は重要だ。

 幼いころから「情報の洪水」のようなメディア環境下で暮らす子どもたちにとって、正しく的確な情報を取捨選択する力を身につけることは、現代を「生き抜く力」にも直結する重要な問題だ。NIEは、新聞を軸に信頼性の高い情報を選別し、じっくり考える習慣を養うための教育活動であり、全国大会で現場教師たちが交流し合う意義は大きい。

 日本の学校現場で、NIEの取り組みが始まったのは1989年だった。2005年には研究者らによる日本NIE学会も発足し、実践授業の研究や学習効果の検証活動なども行われている。

 新聞教育文化財団が指定する本年度のNIE実践指定校は、全国で小中高校など533校に上る。しかし、一般の学校ではまだNIEの認知度は低く、実践指定校でも一部教師の献身的な取り組みに大きく依存している面は否めない。

 学習指導要領の改定を機に、NIE活動の中核となる教師グループを組織し、学校を挙げて推進の機運を高めてはどうだろうか。九州の各県にも、地元新聞社に事務局を置くNIE推進協議会がある。新聞を教材として活用する方法や具体的な実践例、記者を派遣する出前授業の要請など、相談や問い合わせにも対応してくれるはずだ。

 今回の全国大会では、初めて「大学」と「生涯学習」の分科会が設けられた。学校から家庭や地域社会へと、NIEの新たな広がりが求められているということでもあろう。大会での交流をバネに、全国各地でさらに創意工夫にあふれた実践が生まれていくことを期待したい。


=2010/07/30付 西日本新聞朝刊=

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