避難所運営ゲームで体験 北九州でイベント仮想被災者をカードに 多様、複雑、想定外難しい判断に追われ [熊本県]

避難してきた人々が抱える事情に配慮しながら、カードを図面に置いていく参加者たち
避難してきた人々が抱える事情に配慮しながら、カードを図面に置いていく参加者たち
写真を見る
カードには避難者の名前や事情のほか、対応が必要な連絡事項などが記されている
カードには避難者の名前や事情のほか、対応が必要な連絡事項などが記されている
写真を見る

 昨年4月の熊本地震、今年7月の九州豪雨と、九州でも多くの被災者が避難所での長期滞在を余儀なくされる災害が相次いで発生している。さまざまな事情を抱える老若男女が寄り添う避難所は、どう運営すべきなのだろうか。カードゲーム形式で、住民同士が話し合いながら避難所運営を体験するイベントが北九州市で開かれると聞き、参加した。

 90代の両親と一緒に避難してきた「急傾斜」さん、4歳の長男がぜんそくの発作を起こした「前線」さん、地震で両親を失った3歳の「東南海」ちゃん…。いずれもゲームで使うカードに書かれた仮想避難者たちだ。災害にちなんだ名前と、その家族事情が明記されている。

 8月下旬、北九州市八幡東区の多目的施設で開かれた避難所運営体験会は、これらのカードを使う「HUG(ハグ)」と呼ばれるゲームで行われた。HUGとは「避難所」「運営」「ゲーム」のアルファベットの頭文字を並べた言葉で、静岡県が2007年度に開発。全国で8千セット以上が販売されている。

 体育館や学校の教室などが書かれた机上の図面に、参加者が一枚一枚カードを置いていく(避難場所を振り分ける)ことで、避難所運営を疑似体験できる仕組みだ。

 この日は、同区で震度6弱の地震が発生したとの想定で実施された。自分も含め約10人の参加者は二つのグループに分かれ、避難所を切り盛りする自治会の役員役として取り組んだ。

 「赤ちゃんがいる世帯は教室に案内しよう」「体育館は通路を開けておかないと通れないよ」「同じ地区の人同士は近くにいた方がいい」。認知症の高齢者や犬を連れた飼い主、外国人など、カードに書かれた事情はさまざまで、できる限り避難者の事情に配慮した振り分けをしようと、グループ内で意見を交わした。

   □    □

 カードは1枚ずつ進行役が読み上げ、参加者が図面上に置いていくが、緊急的な対応が迫られるイベントカードも含まれている。

 「避難者が使用禁止のトイレを使っています」。想定外の事態の発生だ。設定上、避難地域は断水中。思案に暮れていると、グループ内の一人の参加者が「今は夏だから、水泳の授業があるのでは」と発言し、プールの水を利用するアイデアで急場をしのいだ。

 「妻が妊娠6カ月の4人世帯」「長女に重度の知的障害、世帯主は額から出血」…。次々にカードは読み上げられ、難しい判断を迫られていった。

 この日は150枚以上のカードが読み上げられて、1時間余りでゲーム終了。深く考えさせられる事案が順次襲ってきて、終わった時には思わずほっとした。現実には、ゲームよりもっと過酷な局面ばかりのはずだ。

   □    □

 HUGは防災意識を高めるのが目的で、勝ち負けはない。終了後の意見交換で、体験会を企画したまちづくり団体代表の網岡健司さんは「日頃から住民が互いに顔の見える関係をつくっておけば、災害時にも効率的に対応できると感じた」と感想を語った。

 市職員向けだった避難所運営マニュアルを、今年3月に市民も対象とした内容に改定した北九州市の担当職員は、この日の体験会を「避難所運営は、普段のコミュニティー活動の延長です」と締めくくった。

 隣人との付き合いがないわが身を振り返り、地域のつながりが大事だと強く思った。

=2017/09/14付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]