孤独な老い 描けぬ再建 仮設暮らし 復興へ(1)

プレハブが並ぶテクノ仮設団地内に建てられた「くまもと型復興住宅」のモデルハウス=7日午後、熊本県益城町
プレハブが並ぶテクノ仮設団地内に建てられた「くまもと型復興住宅」のモデルハウス=7日午後、熊本県益城町
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 熊本地震の被災地で最大規模のプレハブ516戸が並ぶ熊本県益城町のテクノ仮設団地。広大な敷地の一角に立つ真新しいモデルハウス3棟が目を引く。

 「最後までおらにゃん」

 1千万円前後に値段を抑えた耐震構造の「くまもと型復興住宅」。昨年末の設置以来、既に4千組超が来場した。仮設住民のほか、熊本市などからも足を運ぶ。住まいの安心への需要は高い。働き盛りを中心に約20組が契約し、約90組が商談中。施工まで1~2年待たせる工務店もある。

 仮設で家族3人と暮らす看護師の女性(26)は、更地にした益城町内の自宅跡に新しい家を建てる。家族会議で会社員の父(60)と一緒にローンを返そうと話し合った。

 テクノ仮設では既に11世帯が自宅を建て直すなどして退去した。あの日から1年。前を向き始めた人、将来を描けない人が同じ仮設に軒を並べる。

   ◇   ◇

 「明るかね。こんな家に住めたら」。テクノ仮設で1人暮らしの高瀬真璃子さん(77)も、同県宇城市から遊びに来た長女(47)とモデルハウスを見学した。新築の木の香りが漂う2LDKにときめく。「でも、無理かな」。仮設を出た後は、町が整備する災害公営住宅に入るつもりだ。

 亡き夫、娘2人との思い出が詰まった自宅を地震で失った。昨夏、仮設へ。貯金と義援金で新築も買えなくはない。踏み切れないのは、老い先と娘たちの将来を考えてしまうから。

 緑内障が進んで左の視力を失い、心臓にはペースメーカー。建てた家は死後、それぞれ家庭がある娘たちの足手まといになりかねない。自問自答の繰り返し。夕方になると疲れる。

 仮設の解消時期を、県は2020年ごろと見込む。高瀬さんは、独り身のご近所さんと冗談めかして言い合う。「私たち年寄りは、最後までおらにゃんたい」

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 テクノ仮設で整骨院を営む増永清人さん(48)は最近、高齢者の体の変化が気になっている。「疲れが足腰にね。避難所、仮設とずっと我慢しとらすけん」

 3月28日、町役場にほど近い惣領(そうりょう)仮設団地で、独居男性(61)が亡くなっているのが見つかった。死後数日。熊本地震の被災地で初めての孤独死だった。

 「お元気ですか?」。3週間前、支援員の女性は男性宅を訪ねた。プレハブの壁は薄い。男性は隣人にテレビの音が漏れないよう、いつもヘッドホンを使っていた。玄関扉をたたいてもなかなか気付いてくれない。その日、たまたまトイレに立っていて、気配を察して玄関先に出てくれた。

 男性はふさぎ込みがちで近所付き合いも少なかった。「大丈夫。何も心配いらんよ」。珍しく聞いた男性の言葉が女性の耳に今もこびりついている。

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 被災地につち音が響く。熊本地震から14日で1年。あの日から一変した光景と変わらぬ現実、新たに向き合う課題もある。復興へ-。長い道の半ばでもがき、揺れる人たちの歩みを追う。

=2017/04/08付 西日本新聞朝刊=

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