震災を機に「自分らしく生きる」 益城町から北九州へ移住の松村さん一家

「自分らしく前向きに生きたい」と話す松村さん一家
「自分らしく前向きに生きたい」と話す松村さん一家
写真を見る

 昨年4月の熊本地震で震度7を記録した熊本県益城町から北九州市へ移住し、新たな一歩を踏み出した家族がいる。小倉南区のヨガインストラクター松村剛さん(30)一家だ。震災直後に幼い娘を連れ、妻の実家がある北九州へ避難。一時は「私たちだけ逃げて良かったのか」と後ろめたさを感じていたが、昨年6月には市内で夢だった起業を実現した。「命の危険を感じたからこそ、自分らしく生きたい」と決意を語る。

 益城町で生まれ育った剛さんは昨年4月14日夜、リハビリの仕事を終え、益城町の自宅で当時11カ月の長女の謡(うた)ちゃんを寝かしつけていた。突然、大きな音とともに突き上げるような激しい揺れに襲われ、妻の有加さん(31)と着の身着のまま外へ出たという。家の柱は傾き、庭には地割れができていた。

 「きっとまた大きな余震が来る。子どもは小さいし命が優先」(有加さん)と判断し、翌日に一家で八幡東区の有加さんの実家へ避難。再び震度7が襲った16日未明の「本震」被害は免れた。1カ月が過ぎても余震が収まらず、松村さん一家は移住を決断。北九州市が被災者向けに提供した小倉南区の住宅に入った。

 当初は、新聞やテレビで変わり果てた故郷を見るたび「避難所でつらい生活をしている人もいる。地元に残ってできることがあったのではと思い悩んだ」(剛さん)が、新たな生活を過ごすうちに少しずつ考え方が変わってきたという。「いつ何が起こるか分からないからこそ、やりたいことに挑戦したい」と有加さん。剛さんも「死を身近に感じ、苦しんだことで人生を見直せた」。しだいに2人で起業することが目標になったという。

 6月には、震災前から出張ヨガや整体の講師をしていた剛さんと、色彩を使い心や体を癒やすカラーセラピストの有加さんの特技を生かし、ヨガやカウンセリングを行う事業を自宅で始めた。現在は市内のスタジオでヨガレッスンをしたり、子育て中の女性向けに講演会を開いたりしている。

 「人生は一度きり。私たちが前向きに生きることが他の誰かの一歩を応援することになるはずだ」。もうすぐ2歳になる娘を抱き、夫婦は笑顔を見せた。

=2017/04/13付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]