災害弱者の孤立防げ 小規模避難所開設やIT活用へ 熊本地震教訓に自治体など

 障害があってトイレの行列に並べない、子どもが夜泣くと迷惑がかかる-。昨年4月の熊本地震では、さまざまな事情で公民館や体育館などの指定避難所に行けず、自宅や屋外で過ごした人が少なくなかった。配慮が必要な被災者が支援の網からこぼれないようにしようと、自治体や民間の試みが広がりつつある。

 熊本県益城町の小嶺ひろ子さん(67)は、半身まひの次女典子さん(39)と夫の隆さん(67)と被災した。前震で木造2階建ての自宅が大きく傾き、近くの駐車場で一夜を明かした。「指定避難所は最初から無理だと諦めてた」と言う。

 近くの商工会議所の好意で、事務室に親戚と8人で身を寄せたものの、トイレへの通路は他の避難者で足の踏み場もない。ひろ子さんが典子さんを抱え、部屋の中でポータブルトイレと消臭剤を使って済ませる日々が1カ月続いた。

 益城町は介護や支援が必要な人のために5施設を福祉避難所に指定していた。小嶺さん一家は、福祉避難所が商工会議所の約1キロ先にあることを知らなかった。ほかにも指定避難所に乳幼児を抱えて入った母親が、他の避難者に気兼ねして壊れた自宅や車中で過ごした例もあった。

 各自治体の防災計画では、全ての人はまず指定避難所に向かい、その後、必要に応じて福祉避難所に移る仕組みになっている。実際には配慮が必要な人をカバーしきれず、福祉避難所で「人手不足で全く支援を受けられず、他に移った」という人もいた。事実、益城町が把握する2施設は、4月16日時点で想定の5倍を上回る100人超が集まっていたという。

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 益城町の避難状況を調査した一般財団法人「ダイバーシティ研究所」(大阪)の伊知地亮さんは「既存の(指定)避難所の機能は画一的だが、住民の事情は横一列ではない」と強調。女性や高齢者、障害者、外国人など、配慮を必要とする多様な人を受け入れる小規模避難所の開設を提起する。

 その実践を始めた自治体もある。大分県別府市は、要援護者が安心して避難できる仕組みづくりに向けて昨年12月、1泊2日の避難所運営訓練を実施。参加者は認知症や内臓疾患のある人、子連れの母親などの状況を疑似体験し、こうした避難所の課題を探った。

 介護事業所やかかりつけ医が、要援護者一人一人に必要なケアや薬の情報などを含む個人のカルテを作り、避難所の運営者と共有して役立てていくことも検討している。

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 指定避難所の外にいる被災者の「孤立」を防ぐための情報通信技術(ICT)活用も模索されている。

 福岡市は、指定外の場所を含めてどこにどんな被災者が避難しているかを職員や避難所運営者が把握、共有できるスマートフォン用アプリの実用化に向け、民間事業者と協議を進めている。同市のIT企業「ティープロジェクト」は、災害でインターネットが不通になっても、住民が衛星利用測位システム(GPS)機能を使って最寄りの指定避難所に行けるアプリを開発中だ。

 別府市で防災推進専門員を務める村野淳子さんは、十数年にわたる被災地支援の経験を踏まえ「災害現場で必要な支援は地域によって異なる。地域の情報と人的ネットワークを持つ人を育てることが必要」と指摘。ICTが機能を発揮するためにも、支援人材の育成が必要だと訴える。

=2017/04/14付 西日本新聞朝刊=

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