熊本激震…最前線ドキュメント(6) 地元負担 戦略は「名より実」

被災地視察に訪れ、蒲島郁夫知事(右)と意見交換する安倍晋三首相(左)。発生直後から「できることは全部やる」と繰り返した=昨年4月23日、熊本県庁
被災地視察に訪れ、蒲島郁夫知事(右)と意見交換する安倍晋三首相(左)。発生直後から「できることは全部やる」と繰り返した=昨年4月23日、熊本県庁
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 「増税とセットの特別措置法の成立を待てば、長い年月がかかる。現行法の中でも要望が実現してきている」。昨年10月5日の記者会見。知事の蒲島は、被災自治体への財政支援で「東日本並み」の立法措置に踏み切らない政府を、あえて批判しなかった。

 東日本大震災では、財源確保のための増税とセットで特措法が制定され、復旧復興関連の地元財政負担は実質ゼロになった。

 県は地震後、同様の立法措置を政府に求めてきた。首相の安倍も「できることは全部やる」と国会で強調していた。ところが-。

 財政出動を抑えたい財務省。官僚は早々に首相官邸に根回ししていた。「被害は(2004年の)新潟県中越地震並み」。ある省庁関係者は「熊本県が『東日本並みの支援を』と訴えることを見越し、機先を制した」と証言する。

 特措法は「望み薄」との見方が広がった。蒲島は難しい判断を迫られた。実現まで国を突き上げるのか、軌道修正を図るのか。

 一人の官僚が重要な役割を果たす。「知事、名より実ですよ」。5月、前副知事で総務省官僚の兵谷(ひょうたに)芳康(58)が進言した。特措法に固執せず、国から予算を引き出す戦略だった。

 兵谷は地震直後、熊本経験者として県に送り込まれていた。兵谷を含め最大9省庁からはせ参じた官僚らは、熊本の頭文字にちなみ「K9」と呼ばれた。

 県の部長級も加えた「K9会議」は、仮設住宅の入居対象を半壊以上に拡大するなど重要決断を相次ぎ下した。中小企業のグループ補助金導入、がれき処理費の補助率かさ上げなど、一部で「東日本並み」の支援も実現した。

 だが現実は厳しい。17年度予算編成。益城町の一般会計総額は前年度当初の約4倍となる392億円に膨らんだ。「国に手厚い財政措置を求め続ける」。蒲島は3月の県議会で苦しい答弁を強いられた。

 総額2兆6116億円。県全体の復旧復興に必要とされる巨額の財源をどう確保していくか。国、県、市町村の攻防と模索は正念場の2年目に入った。

 自治体の財政負担 県は熊本地震後に16回の補正予算を組み、2016年度の震災対応予算は5323億円に膨らんだ。このうち国の負担分などを除く県の実質負担は約5%の260億円に達すると見込む。17年度の県一般会計当初予算の震災関連費は1728億円。熊本市はインフラ復旧や熊本城復旧など将来にわたる地震関連の歳出総額を3211億円と試算、うち市の実質負担額は284億円と推計している。

 ※敬称略、肩書は当時、年齢は現在

=2017/04/15付 西日本新聞朝刊=

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