熊本激震…最前線ドキュメント(5) 被害認定 「猛省を」県が矢面に

家屋被害調査を巡る県と市町村の会合。市町村長から不満が噴出した=昨年9月16日、熊本県庁
家屋被害調査を巡る県と市町村の会合。市町村長から不満が噴出した=昨年9月16日、熊本県庁
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 被災市町村長たちの不満が噴き出した。本震発生から5カ月後の昨年9月16日、県庁で開かれた会合。「猛省し、市町村間の調整を」。矢面に立ったのは県だった。

 市町村が行う家屋被害認定。一部損壊、半壊、全壊といった被害認定は、義援金支給や税減免などあらゆる被災者支援の基礎となる。1次調査を不服とする被災者を対象とした2次調査約4万7千件。そこに重大な格差が生じていた。

 影を落としたのは、熊本市とそれ以外の被災市町村の規模の違いだった。

 被害調査をすることになった被災市町村だが、多くはノウハウを持たなかった。県は国指針に則した「共通調査票」の使用を推奨。2次調査で、被災市町村はこれを使った。

 一方、人口74万人を抱える政令市の熊本市は、地方自治の原則通り自前でやった。簡略化した独自の調査票を作成。それを使った結果、6割のケースで被災者が望む重い判定に引き上がった。

 この「救済率」は県推奨の共通調査票を使った他市町村を大きく上回った。「不公平だ」「どうなってるんだ」。住民の抗議が殺到した。被災者感情を踏まえ、熊本市と他市町村の格差を縮める広域調整を怠った県の失態は明らかだった。

 冒頭の市町村長を集めた会合。副知事の田嶋は調整不足をわびたが、善後策には触れなかった。「全部やり直すと大混乱になる。現実的ではない」(田嶋)

 不満は今もくすぶる。周辺自治体の担当者は「熊本市の物件を共通調査票で判定してみたら、被害点数は市の調査の半分だった。表立っては言えないが、そんなケースが数多くある」。

 県が3月にまとめた検証報告書。「被害認定調査は市町村の自治事務であり、対応に大変苦慮した。県域を越えた調整が必要となった場合、さらに調整が困難になることが予想される」。手痛い教訓を率直につづっている。

 被害認定調査の改善 家屋被害認定の2次調査の手法が熊本市とそれ以外の被災市町村で異なった混乱を踏まえ、県は国に対応策を提案。自治体が行う応急危険度判定、被災宅地危険度判定、被害認定調査、民間による地震保険損害調査など、現在ばらばらに行われている各種調査の一本化などを盛り込んだ。被災者に分かりやすく、人的資源を有効活用する狙い。

 ※敬称略、肩書は当時、年齢は現在

=2017/04/15付 西日本新聞朝刊=

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