混乱の中で支えられ、満1歳 本震の日に誕生の碧心ちゃん

両親に名前を呼ばれると、手を挙げて応じる福山碧心ちゃん
両親に名前を呼ばれると、手を挙げて応じる福山碧心ちゃん
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 熊本地震本震の昨年4月16日夜、熊本市のゆのはら産婦人科医院に男児の産声が響いた。あれから1年、福山碧心(あいと)ちゃんは「パパ、ママ」と言葉を発し、よちよちと歩く。大分市の会社に勤める父の旺仁(あきひと)さん(23)と母の明日香さん(19)は初めての誕生日に、わが子の成長をかみしめながら古里の復興を願った。

 出産間近になり、熊本市の実家にいた明日香さんを14日夜の前震、16日未明の本震が立て続けに襲った。
前震でパニックになり、過呼吸の症状を起こした。「あなたがそんなんじゃ赤ちゃんが苦しむ」。母の言葉にはっとした。「赤ちゃんのために落ち着かなきゃ」

 陣痛が始まった16日夕、たどり着いた医院は床がひび割れて分娩(ぶんべん)室が使えず、手術室を代用した。助産師は「お願い、今揺れないで」と念じたという。当時、高速道は通行止めで、旺仁さんは大分市から車で6時間かけて駆けつけた。オギャー。碧心ちゃんは本震の約19時間後に生まれた。明日香さんは「こんな状況で生まれてきてくれて、ありがとう」と心の中で語り掛けた。

 多くの人の支えで誕生した命だった。各地の医療機関が機能停止に陥る中、長男を取り上げてくれた院長と助産師。断水した医院に水を届けてくれたボランティア。「大きくなったら、そのことを教えたい」

 退院後も余震が続き、母子は大分市に転居した。帰省するたび建物を覆うブルーシートに心を痛める。「いつか元の姿を取り戻した熊本に家族で住みたい」

 誕生日のこの日。「おめでとう」「幸せになりますように」。熊本からのメッセージが続々と届いた。数日前から碧心ちゃんは自分でスプーンを握り、食べ物を口に運ぶ。夜、食卓には好物のハンバーグとプリンが並んだ。

=2017/04/17付 西日本新聞朝刊=

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