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地震後激務、悩む職員ケア 熊大院や診療所、「集団精神療法」で成果

熊本地震発生当時、県庁で情報収集にあたる職員たち。多くの職員が自らも被災しながら対応に追われ、強いストレスに苦しんだ=昨年4月
熊本地震発生当時、県庁で情報収集にあたる職員たち。多くの職員が自らも被災しながら対応に追われ、強いストレスに苦しんだ=昨年4月
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 熊本地震で被災した熊本県内の自治体職員や看護師らの支援職従事者は、自らが被災しながらも災害対応に追われた。東日本大震災の被災地でも業務量が激増し、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)など精神疾患を理由とする休職者の増加が問題になった。時間が経過してから症状が悪化する例もあり支援職の心をケアしようと、当事者同士が被災体験や悩みを語り合う「集団精神療法」の取り組みが熊本市の大学院や診療所で進んでいる。

 熊本大大学院(熊本市中央区)は地震直後から毎月1回、集団精神療法のケアプログラムを実施している。これまで被災者支援に当たった看護師や保健師、被害の大きかった自治体の職員らが参加した。1グループ5~7人の少人数で地震後の心身の変化や不安などを共有した後、それぞれの回復の方向性を話し合う。

 毎回参加している嘉島町の看護師坂本頼信さん(43)は地震直後、災害支援ナースとして震度7を2度記録した益城町などの避難所で、被災者のケアに当たった。勤務先の病院で夜勤を終えてから被災地に駆けつけ、十分な休みが取れない状態が続いた。「武勇伝を語るみたいだから」と周囲に相談できず口数が少なくなり、食欲も低下した。昨年9月からケアプログラムに参加するようになり、「我慢せず自分のことを話せる居場所がある」という安心感を得られたという。

 呼び掛け人の熊本大大学院生命科学研究部の宇佐美しおり教授(精神看護学)によると、災害対応に当たった看護師や行政職員には、「仕事を優先した」と家族に思われ関係が悪化したり、被災者から非難されたりするケースが少なくない。宇佐美教授は「厳しい経験をした者同士だからこそ分かり合えるという所属感を得られることがメリット。復旧復興業務の第一線で働く人たちにセルフケアの力を身に付けてもらうことで、意欲の低下や離職を防ぎたい」と強調する。

 熊本市北区の診療所「むさしヶ丘クリニック」では2カ月に1回、子どもの心のケアや教職員の健康相談に応じるスクールソーシャルワーカーや被災自治体の職員を対象に、グループ療法を実施する。高橋教朗(のりあき)院長は「支援職の人たちは、自身のメンタルヘルスを振り返らないことが多い。参加者は回数を重ねるごとに、被災者として個人的なつらさを吐き出せるようになってきた」と話す。

=2017/05/15付 西日本新聞朝刊=

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