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相続未登記、復興阻む 空き家解体、同意難しく

熊本地震で被災した相続未登記の空き家を見回る熊本市職員=22日、熊本市西区
熊本地震で被災した相続未登記の空き家を見回る熊本市職員=22日、熊本市西区
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 熊本地震の被災地で、所有者の死後に相続登記がなされていない空き家や土地の存在が、復興の障壁となっている。空き家の法定相続人が50人に上ったり、居住地が米国やスペインなど国内外に散らばっていたりして、解体に必要な全員の同意が得られない事例が熊本市だけで50件を超す。東日本大震災では高台移転などを巡り同様の問題が相次いだ。専門家は「柔軟に対応できるよう制度の見直しが必要」と指摘する。

 「いつ倒れるか分からない。とにかく早く解体してほしい」。熊本市内で自治会長を務める阿蘇品洋一さん(75)は、地震で傾いた自宅近くの空き家の前で不安を訴えた。5月には別の空き家が倒壊。けが人はなかったが、警察や消防が出動する騒ぎになった。

 熊本地震以降、市に寄せられた倒壊の恐れがある空き家情報は約300件。市は所有者に連絡して解体を促しているが、相続未登記の空き家は対応が難しい。解体の見通しが立っていない空き家は50を超える。

 所有者の死後、相続登記がされないままの土地や建物は、相続権が配偶者や子などに移る。市によると、所有者の死後数十年という空き家の場合、法定相続人は孫やひ孫の世代に広がって、実態把握が困難になるという。

 自分が法定相続人であることを知らなかったり、相続権を共有する親族の存在を知らなかったりするケースも少なくないという。市の担当者は「解体はあくまで法定相続人が合意して決めることなので強要もできない」と頭を抱える。

 被災地の道路拡幅や区画整理などで、土地を動かす場合も同じような問題が出てくる。熊本県宇土市住吉町では昨年6月の豪雨で、地震で地盤が緩んでいた斜面が崩落し、女性1人が犠牲になった。県は対策工事を計画しているが、地権者は亡くなっている上、相続登記はされておらず、判明した法定相続人は約50人に上るという。

 県の規定で急傾斜地の工事は、所有者から土地の無償提供が前提となるが、「全員から提供の同意を得るのは厳しい」と県担当者。1年が過ぎた今も崩れた斜面の防災対策工事に着手できず、二次災害を懸念して転居者も出ているという。

■柔軟な対応必要

 相続未登記の問題に詳しい東京財団の吉原祥子研究員の話 相続未登記の問題は、東日本大震災でも高台移転が難航するなどして明らかになっており、熊本地震でも顕在化した。相続未登記の土地や建物について一定期間公告し、名乗り出がなければ自治体が管理できるようにするなど、災害時には柔軟な対応を取ることが必要ではないか。個人の権利と公共性のバランスをどう取るか、社会で考えていくべきテーマだ。

=2017/06/28付 西日本新聞朝刊=

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