【おれんじ鉄道物語】(1)演出 「また来たよ」を目指し

おれんじ食堂の旅の終わり、運転席横で「おてもやん」を歌う政木隆太さん
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八代城跡の堀を進む遊覧船
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 「ピーチクパーチクひばりの子♪」。八代市と鹿児島県薩摩川内市を結ぶ肥薩おれんじ鉄道の観光列車「おれんじ食堂」。約4時間の旅が、八代市の終着駅にさしかかるころ、熊本民謡「おてもやん」の明るい歌声が車内に響いた。

 運転席横でハンドマイクを握るのは、チーフパーサー(客室乗務員長)の政木隆太さん(43)。薩摩川内市に着くときは鹿児島民謡「おはら節」。熊本地震後しばらく、復興応援歌の「三百六十五歩のマーチ」や「火の国旅情」を歌った。「旅のささやかな思い出づくりに」と心を込める。

 おれんじ食堂は2013年3月、沿線の食材を使った料理を提供するレストラン列車として、全国に先駆けて登場した。客室乗務員は20代~40代の7人。料理や運転区間が異なる3便6種類の旅を世話する。料理の盛り付け、飲み物の注文への対応、沿線の見どころのガイドと休む間もなく動き続ける。最初の年、接客のプロとしてスカウトされたのが政木さんだ。

 八代市の高校を卒業後、熊本市のホテルニューオータニ熊本(現ザ・ニューホテル熊本)で約15年間、バーやクラブのバーテンダーとして働いた。休日の大半は国内各地を巡る旅に充てた。趣味が高じ30代で国内旅行の添乗員に転職した。

 7年後、バーテンダーの経歴と添乗員の働きぶりを聞きつけた肥薩おれんじ鉄道から、直接口説かれた。添乗員の仕事は大好きだったが「料理を出す列車の中でサービスをする。その新しさに引きつけられた」と再び転職を決意した。

 「数時間の出会いの中で心を尽くしてもてなし、大切な思い出の一こまをつくってもらう」。働き方の形は変わっても、接客の心は変わらない。

 車内の飾り付け、季節の飲み物…。毎月、乗務員全員で話し合い、客が喜ぶアイデアを練る。ご当地ソング披露も、おれんじ食堂ならではのもてなしを考えて発案した。「また来るね」「また来たよ」-。乗客のそんな声が最高の幸せだ。

 穏やかな海岸線を走る鉄路は、背後に緑濃い山の斜面が迫る絶好のロケーション。乗務員たちが客席に運ぶ本格料理は、地元の海の幸と山の幸をふんだんに使う。腕を振るうのは沿線の料理人たちだ。

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 旧国鉄やJRのローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道では九州最長、全国でも2番目の116・9キロを走る肥薩おれんじ鉄道。通学や通勤の足を支え、運行5年目の観光列車「おれんじ食堂」は沿線の観光振興に一役買う。鉄路を支える人々の物語を紹介する。

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 沿線の見どころ 国指定史跡・八代城跡(八代市松江城町)

 八代駅から徒歩約30分。「一国一城」だった江戸時代、肥後国(熊本県)は特別に一国二城が認められ、八代城は加藤氏が1622年に築城。大天守などは残っていないが、水をたたえた堀に囲まれた石垣が往時の姿を伝える。昨年の熊本地震で一部が崩れた石垣の修復工事も進行中。本丸跡には明治時代初めに八代宮が創建された。今春から土・日・祝日に堀の舟巡りと人力車による参道巡り(有料)を楽しめるようになった。DMOやつしろ=0965(31)8200。

=2017/09/26付 西日本新聞朝刊=

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