【おれんじ鉄道物語】(2)地産 古里の食材に思い込め

おれんじ食堂向けの料理を黙々と作る生魚敦さん
おれんじ食堂向けの料理を黙々と作る生魚敦さん
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恋路島を望むハート形のモニュメント
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 水俣市の湯の児温泉ホテル「海と夕やけ」の厨房(ちゅうぼう)。毎週末の午前6時から、総料理長の生魚(いきうお)敦さん(61)が黙々と調理に専念する。2時間後、同市の肥薩おれんじ鉄道(八代市-鹿児島県薩摩川内市)水俣駅に到着する観光列車「おれんじ食堂」に、朝食のフランス料理を届けるためだ。

 肉や魚介類、野菜、果物など30種類近くの食材は、ほとんどが地元や沿線の産品。それらを切り、蒸し、焼き、炒めるといった作業をすべて1人でこなす。「初心に帰ることができる」

 水俣出身の生魚さんが、憧れていた洋食料理人の道を歩み始めたのは20歳から。東京のホテルや、熊本市の熊本ホテルキャッスルなどで修業を積み、30代から約20年間、南阿蘇村のフランス料理店でシェフを務めた。その後、自分の店も持ったが、南阿蘇に来店したことがある現ホテルのオーナーに請われ、「古里の水俣に料理を通して役立ちたい」と帰郷した。

 おれんじ食堂は朝食、昼食、夕食、軽食の各便があり、料理を沿線のホテルやレストランなどが担当する。生魚さんは2015年春のダイヤ改正時におれんじ鉄道から打診され、「古里を走る列車のお客に味わってほしい」と、本業への影響が少ない朝食便を引き受けた。若い頃、フランス研修旅行で見かけた豪華列車「オリエント急行」への憧れも背中を押した。

 季節ごとのメニューで意識しているのは、乗客を楽しませる遊び心という。15年夏は「料理のカーニバル」をイメージし、ワンプレートに9種類の料理を載せたメニューを考案。全国のレストラン列車や駅弁を紹介する本の表紙を飾った。

 乗客の反応が見えない生魚さんたちに、乗客の声を伝えるのは客室乗務員たち。その声を料理人たちは次のメニューに生かす。「プラン料金が高いと思っていたが、料理を食べて納得した」という声を聞いた時が最もうれしかったという。

 大事にしているのは「食材への思い」。「一つ一つの食材と向き合い、どうしたらおいしさを表現できるかという思いを料理に込めたい」。乗客に思いが伝わることを願いながら、夜明けの厨房に立っている。

 レストラン列車の先駆けとなったおれんじ食堂。誕生の陰にはリーダーの情熱と挑戦があった。

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沿線の見どころ エコパーク水俣(水俣市)

 水俣駅から徒歩約30分。県が水俣病の教訓を生かし、環境の大切さを伝える公園として水俣湾埋め立て地に整備した。山、里、街、海の4ゾーン計約42ヘクタールの園内は健康運動やスポーツ競技、子どもの遊びなどが楽しめる多彩な施設があり、約750品種6500株が植えられたバラ園では毎年春と秋に「ローズフェスタ」を開催。海側には全国約100カ所の「恋人の聖地」の一つがある。隣接地に県環境センター、水俣市立水俣病資料館、道の駅も。公園管理事務所=0966(62)7501。

=2017/09/27付 西日本新聞朝刊=

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