【おれんじ鉄道物語】(4)開拓 信頼築き懸け橋目指す

上海や台湾の旅行会社と中国語で商談をすることが多い文武雅人さん
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格式高い門と石垣、生け垣が続く武家屋敷群
格式高い門と石垣、生け垣が続く武家屋敷群
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 「明白了(ミンバイラ)(分かりました)」「謝謝(シエシエ)」(ありがとう)」。鹿児島県出水市の肥薩おれんじ鉄道(八代市-鹿児島県薩摩川内市)出水駅にある同社営業部には、しばしば流ちょうな中国語が響く。中国などの旅行会社と電話でやりとりするのは、吉林省出身の文武(ふみたけ)雅人=中国名・董斌(トウヒン)=さん(35)だ。

 同部は、23人の社員が観光列車「おれんじ食堂」などの営業、接客サービス、鉄道事業・イベント企画、旅行業、予約センターの5業務を担当。文武さんは旅行業務の係長だ。

 国内外問わず、旅行業務全般を扱う。割合が大きいのは中国・上海や香港、台湾などからのインバウンド(訪日外国人客)。文武さんは現地などの旅行会社の依頼で、団体ツアーの日本国内での宿泊やバス、ガイド、食事を手配する。沿線の企業の社員旅行、八代市長や鹿児島県霧島市長が中国や台湾に出張するときの手配を請け負うことも。

 「売り上げを増やすことが会社にとっての自分の存在価値」と言い切る文武さん。担当者2人という少数精鋭だが「鉄道事業の赤字を少しでも補いたい」との思いで顧客の新規開拓を目指す。年4~5回の海外出張では、現地の旅行会社におれんじ鉄道を使う旅行商品づくりもアピールする。

 「相手に満足してもらえる仕事を一生懸命して心をつかむ。信頼関係を築くことが最も大事」というのが信念だ。「初めて請け負った旅行会社やお客から2度目の依頼があるときがうれしい。信頼されたんだと」

 おれんじ鉄道が営業部を設置したのは、開業5年後の2009年。留学先の鹿児島大大学院を卒業後、鹿児島市の旅行会社に勤めていた文武さんは、仕事で知り合った当時の社長、古木(こぎ)圭介さん(74)から「旅行業も立ち上げる。一緒にやろう」と熱心に誘われ、転職を決意した。

 「インバウンドも含めて交流人口を増やそうというグローバルな発想に共感した」と振り返る。その思いは今も同じだ。「日本でずっとやっていこう」と国籍も取得した。中国の両親も理解してくれたという。「日本と中国のビジネスの懸け橋になれれば」と願う。

 おれんじ鉄道は営業部新設の翌年、運転士の募集も始めた。若手運転士の育成が急がれていた。

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沿線の見どころ 出水麓武家屋敷群(鹿児島県出水市)

 出水駅から徒歩25分ほど。薩摩藩が造営した武家屋敷群で、約44ヘクタールが国の重要伝統的建造物群保存地区。堂々とした武家門と川石の石垣、見事に刈り込んだ生け垣が続き、塀越しに大きな庭木や屋敷の瓦屋根がのぞく。税所邸とNHK大河ドラマ「篤姫」のロケ地になった竹添邸は有料で公開。今年5月、市が拠点施設として出水麓歴史館を開館した。税所邸と竹添邸、歴史館の共通入館証として年内に何回でも使える缶バッジ(大人500円、小中生300円)を販売。歴史館=0996(68)1390(毎月第3水曜休館)。

=2017/09/30付 西日本新聞朝刊=

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