西日本新聞電子版 1周年記念プレゼント

【おれんじ鉄道物語】(5)責任 夢追い続け咲かせた花

停車中のおれんじ食堂の運転席で笑顔を見せる三田村彩加さん
停車中のおれんじ食堂の運転席で笑顔を見せる三田村彩加さん
写真を見る
「阿久根伊勢えび祭り」のメニューの一つ
「阿久根伊勢えび祭り」のメニューの一つ
写真を見る
写真を見る

 「お疲れさま」「頑張ってね」というねぎらいの言葉は日常のこと。時には「運転、上手だね」「かっこいいね」とのうれしい声を掛けられる。乗客との距離の近さは、ローカル線ならでは。肥薩おれんじ鉄道(八代市-鹿児島県薩摩川内市)の運転士、三田村彩加さん(32)は「お客の一言が元気の源です」と声を弾ませる。

 大阪府出身。子どもの頃は運転士どころか、列車にも全く興味がなかった。転機は高校卒業後、阪急電鉄の駅前のケーキ店で働いたこと。店内から通過する電車や改札口が見えた。来店した車掌と知り合い、鉄道の話を聞く機会が増えた。「気付いたら、運転士になりたいと強く思うようになった」

 店を辞め、JR西日本の子会社に入社。1年間、列車の清掃などをする期間を経て運転士の試験を受けたものの不合格に。ヘルパーの資格を取り、病院の看護助手として働いた。

 どうしても夢を諦められなかった。25歳の時、インターネットで採用情報を探すと、おれんじ鉄道の「運転士募集」の文字が目に飛び込んだ。知らない土地だが、迷わず応募した。試験を突破し2011年11月に入社。JR九州での研修を経て13年春、おれんじ鉄道に初の女性運転士が誕生した。

 実は、同社が運転士募集を始めたのは10年から。開業から6年間、運転士を募集せず、JR九州からの出向者と同社OBに頼っていた。自社採用の若手育成が課題になっていたのだ。

 初めて列車を動かした時の感動は「想像以上だった」と振り返る三田村さん。「それ以上にたくさんの命を預かっているという責任の重さを感じた」

 穏やかな加速と減速、できるだけ無駄な操作をしない運行。緊張感を保ち、乗り心地良い運転に心を込める。観光列車「おれんじ食堂」は車内で食事をするだけに、なおさら注意を払う。

 そんな緊張感を、日々表情を変える東シナ海と八代海、広い空、線路沿いの季節の花が和らげる。手を振る親子や敬礼する少年も。「もし運転士を諦めていたら、一生後悔したろうな」とつぶやいた。

 客の命を乗せて走る列車。それを支える縁の下の力持ちたちがいる。

    ◇      ◇

沿線の見どころ 阿久根伊勢えび祭り(鹿児島県阿久根市)

 阿久根市内の旅館や日本料理店、フランス料理店、すし店など11店舗で31日まで実施している。10店が阿久根駅から徒歩約7分~15分圏内、道の駅「阿久根」が薩摩大川駅から徒歩約10分。鹿児島県内で有数の漁獲量を誇る伊勢エビを使った多彩な料理を提供する企画で11回目。生き造りや塩焼き、ボイル、フライ、エビの頭のみそ汁などの定食やコース、丼、単品料理を用意。3尾を使ったぜいたくな定食や客の要望に応じて料理する店もある。定食は3500円から。

=2017/10/01付 西日本新聞朝刊=

→電子版1周年記念!1万円分賞品券やQUOカードが当たる!!

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]