【おれんじ鉄道物語】(6)安全 縁の下鉄路守り半世紀

若手と組んで線路の点検をする宮内秀典さん(左)
若手と組んで線路の点検をする宮内秀典さん(左)
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高台の露天風呂にはモノレールで上がる
高台の露天風呂にはモノレールで上がる
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 夏場。50度以上に熱せられたレールと砂利から熱気が立ち上り、全身から汗がしたたり落ちる。肥薩おれんじ鉄道(八代市-鹿児島県薩摩川内市)佐敷工務センター長の宮内秀典さん(68)は、過酷な現場で線路を保守管理する保線の仕事に情熱を傾ける。

 芦北町の線路沿いの家で育った。高校卒業後、旧国鉄の熊本鉄道管理局を受験して臨時雇用となり、レール交換などをする保線の部署に配属。それ以来、正規採用後もJR九州、おれんじ鉄道と保線一筋に歩み、今年で半世紀になった。

 「保線がしっかりしとらんと、列車の安全も、乗客の命も守れん。縁の下の力持ちという誇りと責任感かな。続けられたのは」

 おれんじ鉄道では出向した55歳からセンター長を務め、定年後も嘱託で継続。電力と信号・通信の保守業務も束ねる重責だが、若手社員と現場に足を運ぶ。全線116・9キロのうち熊本県側の約60キロを宮内さんを含む5人で受け持つ。

 「レールは生きとる」と言う。ミリ単位で夏は膨らみ、冬は縮む。毎月1回、県内の全区間を歩き、レールの継ぎ目にボルトの緩みなど異常がないか調査。これとは別に、春には継ぎ目の隙間幅が適正か測定し、夏の終わりには枕木を検査する。

 作業に欠かせないのが、当日の全列車の運行予定を書き込んだ「作業ダイヤ」だ。臨時列車の運行を赤線で書き加え、朝と現場到着後の2回、運行が予定通りか運転指令に確認し、最寄り駅の列車の出発時刻を作業員同士で声に出し合ってから作業を始める。

 臨時雇用1年目、責任者が作業ダイヤに臨時列車1便の記入を忘れ、作業員たちが衝突事故に遭いかけた。宮内さんは線路を走り、近づく列車に必死で手を振った。停車したのは、わずか30メートル手前。「危機一髪だった。まずは作業員が自らの命を守ることが最優先。作業ダイヤは命綱だ」と心に刻み、後輩に伝えてきた。

 大雨で止めた列車の再開判断。最近増えたイノシシやシカとの衝突…。自然とも向き合わねばならない。

 70歳が迫る。「早く若手に一人前になってもらわんとね」。一緒に作業する若手を優しい目で見やった。

 軽油を燃料に走る列車には、もう一つの原動力がある。沿線住民の応援だ。

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 沿線の見どころ つなぎ温泉・四季彩 (津奈木町)

 津奈木駅から徒歩約10分。国道3号沿いにある津奈木町内唯一の温泉施設は、モノレールで上がる露天風呂がユニークだ。高さ約30メートルの湯船からは、津奈木の町並みや八代海を望める。地元食材を使った料理を味わえるレストランのほか、近くには物産館、JAの農産物直売所、つなぎ美術館がある。美術館からも高さ約80メートルの奇岩「重盤岩(ちょうはんがん)」に上がるモノレールがあり、展望所や散歩道がある舞鶴城公園として整備されている。温泉は第1水曜休館、美術館は毎週水曜休館。四季彩=0966(78)4126。

=2017/10/02付 西日本新聞朝刊=

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