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【おれんじ鉄道物語】(7)応援 おもてなしが満ちる駅

日奈久温泉駅構内の花の手入れをする「おきん女会」代表の佐藤タエさん(左)
日奈久温泉駅構内の花の手入れをする「おきん女会」代表の佐藤タエさん(左)
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江戸時代末の「なまこ壁」の建物も残る
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 「お茶をどうぞ」。肥薩おれんじ鉄道(八代市-鹿児島県薩摩川内市)の日奈久温泉駅では、駅のスタッフが待合室の乗客を茶でもてなす。観光客の多くが「駅でお茶をいただいたのは初めて」と驚き、やがて笑顔に変わるという。

 スタッフは八代市日奈久地区の主婦グループ「日奈久おきん女(じょ)会」の人たち。おれんじ鉄道が開業した2004年、切符と定期券の販売、駅舎の清掃などを委託されてから自主的に続けている。列車の運行は約1時間に1本。代表の佐藤タエさん(70)は「列車を待つ間、少しでも心地よく過ごしてほしいと始めました。わが家にお客が来たときと同じような気持ちですね」。

 おれんじ鉄道は全28駅のうち、有人駅10駅の業務を住民団体に委託している。おきん女会は駅業務を受けるため、佐藤さんら当時50~60代の地元の主婦6人が「日奈久の良さを乗客にアピールしたい」と結成した。グループ名は日奈久温泉の民芸品「おきんじょ人形」から取った。

 1923(大正12)年建築の木造駅舎は、花と緑に包まれている観がある。構内の至る所に四季の花々のプランターやポットが飾られ、花壇もある。おきん女会が「駅をきれいにして気持ちよく利用してほしい」と栽培を始めた。

 同会によると、共感した元小学校長や花壇を造る住民らが、次々と花の苗を駅に持って来るようになった。地元の老人会は年6~7回、駅周辺の除草作業をしてくれる。応援の輪が町全体に広がっている。

 駅を多くの人に気軽に利用してほしいと、月1回のペースで駅舎で八代市の音楽家や子どもらのコンサートを開き、合わせて野菜や卵なども販売している。

 佐藤さんはおれんじ鉄道が国鉄だった時代、蒸気機関車で八代市の高校に通った。車内は乗客であふれていた。駅前は毎朝、朝市がにぎわい、駅と温泉街を馬車が行き来した。温泉街に響きわたっていた大勢の宿泊客の下駄の音が、古里の思い出だ。

 おきん女会のメンバーは平均年齢69歳の8人。「古里とおれんじ鉄道がいつまでも元気であってほしい」というのが共通の願い。きょうも、出発する列車に深々と頭を下げる。

 =おわり

    ◇      ◇

沿線の見どころ 日奈久温泉街(八代市)

 日奈久温泉駅から徒歩約10分。黒と白のコントラストが独特な「なまこ壁」が残る江戸時代末建築の村津邸、国登録有形文化財の旅館「金波楼」、俳人種田山頭火が泊まった旧木賃宿「おりや」など昔の風情を楽しめる。路地裏には多様な神が祭られ、山頭火の俳句を書いた丸太板が至る所に掛けられている。公衆浴場が3施設、温泉旅館が15施設あり、10旅館で立ち寄り湯ができる。400年の歴史がある高田焼窯元や桑原竹細工店もある。日奈久ちくわが名物。日奈久温泉観光案内所=0965(38)0267。

=2017/10/03付 西日本新聞朝刊=

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