西日本新聞

2008年08月22日

<11>生命の流れ 土とつながる食べ方

 食べものさんの生きる力を自分につなごうと、17の提案からなる「食生活チェックシート」のうちの9つを説明しましたが、実践された皆さん、体の調子はどうですか? 心も一段とウズウズしてきましたか? 最終回は、たくさん送っていただいた感想や質問の一部を紹介しますね。

 「5日に1回しか出なかったウンチが毎日出るようになった。家族でチェックシートに取り組んだら、週明けに体のだるさを訴えて学校を休むことが多かった子どもが元気に登校できるようになった」

 「野菜を皮ごと使うようになり、しっかりかむようになりました。風邪やのど痛でよく通院していたのに、最近病院に行きません」

 私たちの体を作る細胞の数は60兆。毎日その60分の1にあたる約1兆が死に、おしっこや汗、垢(あか)となって体から出て行って新たな細胞と入れ替わります。だから計算上は60日たつとほぼ交換済み。健康な人なら臓器も脳も骨さえも、1年たてばほぼ“移植”完了するそうです。その新たな細胞の元となるのが、あなたの食べたもの。だから、何をどう食べたかであなたの心と体は着実に変わるんです。

 特に現代の食べものは、同じ農産物、加工食品、調味料でも、命がぎゅっと詰まったものから、量と形を似せた蜃気楼(しんきろう)のようなものまでありますから、その差はなおさら。また、最近増えた「うつ」などの症状も、腸内細菌と密接に関係しているという説もあるくらい、食は精神面とも密接につながっている。第一話で紹介した、30日で多くの中学生が自分の変化に驚いたという事例も当然のことなのです。

    ×    ×

 野菜は皮やへたなど、今まで捨てていた部分にこそ栄養が詰まっている。特に、玉ネギの皮や野菜の生長点を煮出したスープ「ベジブロス」は、「目からウロコ」だったようですね。

 「玉ネギの皮を煮出してびっくり。あんなきれいなオレンジ色なんですね」

 「ものは試しと、早速実践してみたら、おいしいじゃないですか。コクが出ますね。得した気分です」

 ベジブロスは野菜の種類が多いほどおいしくなります。でも、こんな失敗もありました。

 「玉ネギの皮を煮出したら、あまりの苦さに閉口。飲みたくても口が開かず飲めませんでした。何がいけなかったのでしょうか?」

 理由はいくつか考えられますが、まずは玉ネギの皮を煮詰めすぎたか、量が多すぎた。次は野菜そのものの問題で、化学肥料主体で農薬を使った野菜と元気野菜では、はっきり味が違うことも多いです。また、よく洗って出荷された根もの野菜は酸化が早く、傷が多いときも苦くなります。やはり、土作りをきちんとしている生産者の作物を選んでほしいです。少々値段が高くても、まるごと使えるとなれば話は変わってきますから。

 もちろん、皮ごと料理にも例外はありますよ。新ジャガは皮ごといただけますが、芽が動きだした古ジャガや、光が当たって緑化した皮はおなかをこわすおそれがあります。食べたら苦いのですぐわかります。

    ×    ×

 長い川の流れの一部分を同じ場所から見ると、そこにはいつも同じ水が流れているように見えるけど、その中身は常に入れ替わっている。今食べたニンジン、今日食べたごはん、そしてあなた自身も、地球の大いなる生命の流れの一部といえるかもしれません。

 皆さんはこんな感覚、実感できますか? まだ実感できていない方は、ぜひ自分で生ごみから土を育て、めちゃおいしい野菜を育て、食べてみてください。本当に、地球と自分がつながった感じがしますよ。

 便利快適な社会になり、こんな感覚を失うにつれ、心も体も狂ってしまうのではないか。宮崎駿監督のアニメ「風の谷のナウシカ」で、ばばさまが言った言葉を覚えていますか。「失われし大地とのきずなを結び、ついに人々を青き清浄の地に導かん」。もっともっとみんなが食べものと食べ方を変えて元気になってほしい。そして自分が大地に、たくさんの生きものたちに生かされている感覚を取り戻してほしい。私が代表を務める「大地といのちの会」の仲間はそんな願いをこめて活動しています。

 今回の連載では、チェックシートのすべてを紹介できませんでした。次の機会があれば、そのとき詳しく説明させてもらいますね。
 (大地といのちの会代表)

 =おわり

食生活チェックシート(17項目から3つを選び、1ヵ月実践する)
1 元気な旬の野菜を
いただこう
(7~10月)トマト、ナス、ピーマン、キュウリ、オクラなど
(11~5月)キャベツ、レタス、ダイコン、ニンジン、カブなど
2 葉野菜もいただこう (7~10月)シソ、モロヘイヤ、ツルムラサキ、ソバの茎葉など
(11~5月)レタス、キャベツ、ホウレンソウ、コマツナなど
3 皮ごといただこう 皮は命のバリアで栄養分が集中。ゴボウも皮にこそ栄養分がある
4 生長点こそいただこう ピーマン、トマトなどのわき芽、玉ねぎの基部、キャベツ、レタスのしん、ニンジン、ダイコンの首などは細胞の活性が一番高い部分
5 元気な土で育った野菜
を選ぶ
ハウス野菜より、命いっぱいの土で、雨風や紫外線に耐えて育った露地野菜の方が生きる力が強く、おいしい
6 海草をいただこう ワカメ、コンブ、アオサ、のり、寒天などは海のミネラルが豊富
7 食事の量の半分はご飯
をいただく
タネは生命力のカプセル。食事の中心(全体の5~6割)はコメでとる。タネの前の菜の花類もミネラルなど命いっぱい
8 玄米か分づき米、雑穀
入りご飯にする
玄米や分つき米に、ヒエ、キビ、アワ、小豆、アマランサス、麦、黒米などをちょっと加えてみよう
9 朝はご飯と味噌汁 日本人の食事の基本。みそは国産大豆のものを選ぶ
10 油ものを減らし、煮物、
和え物を食べる
生活習慣病など現代病の多くは、脂肪や動物性たんぱくの取り過ぎ。野菜は生食より煮た方がファイトケミカルを吸収できる
11 たくあん、ぬか漬け、
納豆、梅干しを食べる
発酵食品は、微生物やその代謝物質をいただく日本人の知恵。安いたくあんや梅干しに試練を乗り越えた微生物のパワーはない
12 添加物の少ない調味
料、加工食品を
本物のしょうゆの味は微生物の代謝物質の積み重ねでできている。原材料に日常の食べ物以外の名前が少ないものを選ぶ
13 のどが渇いたら、水や
お茶
市販のジュース、スポーツ飲料は糖分が多い
14 間食をしない おなかをすかせると腸が活性化。ご飯の前にお菓子を食べない
15 30回かんで食べよう 最初の一口だけでもいいから30回かむ。記憶力、運動能力、視力の強化、だ液による毒消し、小食で満腹感など、いいことだらけ
16 心から感謝していただ
こう
手を合わせ、自分が無数の小さな命に支えられていることを想像してからいただく
17 砂糖、塩を選ぼう 自然海塩には海のミネラルがたっぷり。多少高くても本物を使う
注)食習慣以外に、早寝早起き、運動する、歩く、笑うなどの生活習慣も非常に大切です


=2008/08/22付 西日本新聞朝刊=

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