講師紹介

【長崎・南島原市】
福田 泰三(ふくだ・たいぞう)
小学校教諭

得意分野:

■プロフィル
1967年生まれ。佐世保市大和町在住。西南学院大学児童教育学科卒後、佐世保市立福石小、大塔小、早岐小を経て、波佐見町立南小学校。03年10月佐世保市環境教育ワークショップ委員になる。総合的な学習で早岐瀬戸や早岐の歴史、環境教育、食育など子どもとともに行う活動を通し、子どもから子どもに広がる総合的な学習のあり方を模索中。

■連絡先
〒859-2503
長崎県南島原市口之津町丁4455-3
電話:0957(86)5610
s-cai-t02@town.hasami.nagasaki.jp

[農漁食]長崎からの報告―福田教諭の実践
第3回食卓セミナー くらし力で学力向上
「みそ汁の日」家庭と学校つなぐ

 ■食 くらし■
 子どもたちの学力低下が問題になる中、授業時間増や学区選択制など、さまざまな改革が検討、実施されている。だが、肝心の子どもたちに授業を受ける体勢が出来上がっていなければ、効果は薄い。長崎県波佐見町立南小学校の福田泰三教諭らを招き、「若年層の低体温の現状と、それを解消する食生活チェックシートと“みそ汁の日”」をテーマに七月二十一日、福岡市で行われた「第三回食卓の向こう側セミナー」の模様をリポートする。 (編集委員・佐藤弘)
     ◇
 ▼生きる土台
 学力向上が叫ばれる一方で、授業中にぼんやりしたり、話を聞こうとしても聞けなかったりする子どもたちが目立つ。尋ねてみると、多くの場合、朝ご飯を食べていない。
 今の子どもに教えるべきは、生きる土台だ。学力は点数だけでなく、学ぼうとする力、学べる力であり、その源は基本的な生活習慣を培う「くらし」の中で、はぐくまれるからだ。
 くらしのリズムを大切にしないと、学力は向上しない。早寝、早起きをすれば、必然的にしっかりと、朝ご飯もとれるようになる。
 食育といえば、子どもが栄養のことを学ぶ授業が多いようだが、いくら学校で教えても、実際に食事を作るのは、本人ではなく親。ならば、自分で作ること、学んだことを実践できる方が重要と考え、取り組んだのが「食生活チェックシート」と、子どもが朝、台所に立ってみそ汁を作る「みそ汁の日」だった。
 小学校五年生の家庭科で習うみそ汁作りは旬の野菜を入れ、素材を包丁でポンポンと切って鍋に入れれば、簡単に自分でできる。また、山の力(野菜や豆腐などの食材)と海の力(昆布、いりこなど)、発酵食品が同時にとることができ、必然的に日本の気候風土に合った和食になる。
 取り組みのヒントは、「子どもがつくる“弁当の日”」を提唱する高松市立国分寺中学校の竹下和男校長の話だった。
 「高校生の娘がいるが、私が病気になってもごはんを作ってくれずに、二階に上がってしまうんです」(ある母親)
 「小さかった娘さんがお手伝いしようと言ってきたとき、『ほかにやることがあるでしょ』と、二階に上がって勉強するよう指示したんじゃないですか。だから、娘さんは、それがいちばんと考え、実行しているだけなんですよ」(竹下校長)
 これは、親が子どもを台所に立たせるより、勉強やスポーツが大事と考え、行動してきた結果だ。そこをもう一度、小学校から考えようというのが「みそ汁の日」。みそ汁作りを暮らしの中で体験することで、学校の学びが家庭で生き、家庭での実践が学校で生きる。この連携と継続こそが、くらし力をはぐくむのだ。
 ▼家族の感謝
 子どもが台所に立つと、勉強する時間がなくなると思われるだろうが、それは逆だ。親子で共有する時間が増える良い面がある。
 「きょうは、何を勉強したと?」「こういう問題があったとよ」「で、どう思ったと」-。
 こんな感じで、子どもは授業の復習ができると同時に、自分の考えをまとめ、自分の言葉で話す力が培われる。
 料理にしても、最初は失敗もある。だが、継続していけば、子どもは次第に頼れる存在になる。
 「じゃあ、頼んだよ」。そう言われた子どもは心が安定し、自尊感情が芽生える。失敗してもいい。それが学びになると思えば、何かに挑戦するときも、不安より意欲を持って取り組むようになる。
 -福田礼さん(小六)の作文
 今日、お母さんが具合が悪くて寝ていました。だから私は、ポテトサラダを作ることにしました。妹(双子)と私で買い物をして、実際に作りました。
 私は上手に作れました。お母さんも「ありがとう」と言ってくれました。なんだかそのとき、とてもうれしかったです。これからもいろんな料理を作っていきたいです。
 -母からのメッセージ
 体調をくずし、二人で夕食をしてもらいました。唯と礼が二人で話し合い「ポテトサラダ」を作ってくれました。唯が調理実習で作ったのを家で実践してくれました。お互いが役割分担していたから、横になりながらも安心して見ていられました。二人ともありがとう。また今度作ってね。
 言葉の持つ力は大きい。「ありがとう」「あなたのこと信じているからね」という言葉が飛び交う家族は、子どもが実にしっかりしている。
 感謝の「謝」は、言葉を身に付けると書く。朝、みそ汁を作り、家族から感謝の言葉をかけられた子どもが、どんな気分で登校し、授業に向かうか。想像してほしい。
 ▼集中と我慢
 勉強には心の安定と集中力が必要だ。集中力とは我慢する力。宿題を忘れる子は共通して朝起きるのが遅く、時間の使い方がわかっていない。「これくらい、いいさ」と、やるべきことをやれない自分に対して甘い。
 でも、その気になれば、性格は変えられる。性格を変えるには生活を変えること。だから、親に暮らし力向上の重要性を説き、くらしのリズムを取り戻そうと、みそ汁作りを勧めるのだ。
 気づかせるのは、誰でもできる。でも問題は、そのあとだ。どう具体的に動かし、実践していくのか。そのためにも、学校はもっと家庭と連携していく必要がある。当たり前のことが、当たり前のようにできるような、くらし力向上に向けて。
 子どもにたくさんの心のスイッチを持たせ、どんどんオンにしてあげる取り組みが大事なのだ。
    ×      ×
 ●ワードBOX=食生活チェックシート
 生ごみリサイクルで、農薬、化学肥料を使わない元気野菜作りを展開している「大地といのちの会」(長崎県佐世保市)の吉田俊道代表が作成した。「旬の野菜をいただこう」「のどが渇いたら、水かお茶」「三十回かんで食べよう」など十七項目の中から三つを選び、一カ月間実践するというもの。九州地区の三十を超える学校で行われており、低体温の解消や体調改善など児童、生徒からの報告が寄せられている。問い合わせは同会=0956(25)2600。

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