講師紹介

【福岡・北九州市】
池田 博子(いけだ・ひろこ)西南女学院大学短期大学部生活創造学科教授

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大学生だって変われる

 一年生前期の「調理の基本」という科目で五月から二カ月間、二クラス(一クラス三十六人)で計五回の“弁当の日”を実施。延べ三百六十個の弁当を見た。

 弁当は原則として自分で作るものの、調理冷凍食品の使用や家庭の味の伝承の観点から家族と一緒に作ることも認めた緩やかな決まりでスタート。最終課題は、調理室での弁当の自由製作にした。

 取り組みのきっかけは西日本新聞連載「食卓の向こう側第八部・食育その力」。記事を読んだ学生が寄せた「自分が小学生のときに“弁当の日”があったら、今こんなになっていない」という感想に、背中を押された。

 三回目ぐらいまでは気楽に構えていたが、だんだん学生が本気になってきた。

 大事なのは私がどう評価するかではなく、学生自身が調理が好きになり、腕を上げたと自覚すること。認めていた冷凍調理商品はいつのまにか手作りに代わり、回を重ねるごとにレベルアップ。大学に入るまで炊飯器の使い方も知らなかった学生が、立派な弁当を作ってきた。人間はその気になればやれる、大学生でも変われるという、いい見本だろう。

 効果は、料理への興味、関心の高まりや家族とのコミュニケーションが増えたなど、小学生と変わらない。ただ、主体的に学び、技術が確実に上達した学生たちは一様に「こんな機会を与えてくれてありがとうございました」。宿題を与えてこんなに感謝されたのは初めてだ。

 私自身も弁当を通じて学生といろんな話ができ、交友関係や家族関係をたくさん見ることができた。問わず語りで家族の悩みなどを話しては、自分で答えを見つけていったり、日ごろ伏し目がちな子が目をキラキラさせて話をしてくれたり。教職に就いて、こんなに学生と接近したことはなく、これがいちばんの収穫だった。

 近年、生活者として自立できていない学生が増えている。自分で考え、判断することができないのだ。自分で問題意識を持ち、主体的に問題解決に取り組んだ経験が希薄なのだろう。調理中でも、珍事件が起きる頻度が高くなっている。体験がなかったら、大人になって突然調理ができるものではないし、大学生でも小学生でも同じこと。五感を使った体験が必要なのだと思う。

 今、学校教育の中ではそのような科目は減らされており、中学、高校の家庭科教師と話すと、悲鳴にも似た声を聞く。だが、学校教育で家庭科を軽視したら、日本は絶対駄目になる。

 手探りの取り組みだったが、“弁当の日”ネットワークをつくって知恵を出し合えば、日本を変えられると予感する。後期の応用編でも実施するつもりだ。

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