講師紹介

【福岡・大野城市】
尾崎 正利(おざき・まさとし)
食品加工コンサルタント

得意分野:

■プロフィル
出身:福岡県 生年:1970年 現住所:福岡県
主な経歴:西南学院大学卒業後、都市計画コンサルタント事務所に入り主に地方振興計画の策定に関わる。
2003年に(有)職彩工房たくみを設立し独立。九州をはじめ各地の農漁業の流通・販売・加工の振興に関わると一方で、食品加工の製造技術・生産管理・経営管理に関するアドバイスを各地で行う。
福岡県大野城市在住。農水省農林水産物・食品地域ブランド化支援事業プロデューサー(福岡県豊築漁協担当)。「福岡よかもん市場」出店。博多法人会青年部会員。

■問い合わせ先 (有)職彩工房たくみ TEL.092-503-9777、FAX.092-503-9777
shokusai-takumi@awa.bbiq.jp

尾崎正利(食品加工コンサルタント) ~生かし切れない素材で産地経済に活力を

農家も漁家も経済活動に乗ってみたい
 春から夏の例年の同じ時期に電話を下さる知り合いの農家がいます。最も美味しい旬の時期なのに価格低迷にあえぐ青果で何とか挽回の糸口を作りたい、そういう相談です。
商品流通の現場からは高値取引を狙って旬よりも前に出荷される「早もの」が求められる傾向にあり、各地の農家はそれに呼応して早めに栽培~出荷と動くため、最初にまとまった量の出荷ができないかぎり、その年の売上げは大きく見込めなくなります。旬の頃には同じ作物が大量に市場に出回るため、単価が伸びないことが多いからです。
 生かし切れない素材、これを何とかしたいという農家は数多くあり、いただいた電話に出るとひしひしと想いが伝わってきます。
同じことは水産物の世界にもあり、生かし切れない魚介を何とかしたいという漁協や漁業者も大勢います。

生かし切れない素材で新たな商品開発を進める
 いま私は農水産品の販売や加工品開発のお手伝いをする仕事に従事しています。仕事の中で一番大事にしたいのが、生かし切れない地元素材を使った加工品や飲食サービスを形づくることです。
私は納得できる下調べや地元の方と一緒に議論や試作を行いながら方策をあれこれ練るプロセスが大事だと思っているので、解決までに現地に長逗留するなどして成果が出るまでに必要以上に時間がかかってしまうこともあります。

全神経を集中、素材の良いところ探し
 与えられた素材には、他の素材に負けないどこか良いところがありますので、それを見出すまでは全神経を集中します。例えば素材の良さを生かす切り口として次のような着目をしたことがあります。

ⅰ)香りを生かす
・例えば、鹿児島県の特産である「ぼんたん」(文旦)などの中晩柑の精油は品種によって少しずつ微妙に成分が異なっており、ハッとする香りのもの、食品に合わせると良い風味を醸し出すもの、組み合わせたら実に官能的な香りになるものなど、用途を考えるだけでも楽しいです。
・無臭と思われがちな「柿」などは加熱して炊き込むと、蒸し芋みたいな香りになり、他の素材と組み合わせると、じんわりと甘い香りで自己主張してきます。

ⅱ)色を生かす
・冬場に柑橘が乏しい東北以北の方々にとって九州産の柑橘の明るい色調は、心を明るくするのだそうです。ジャムやマーマレードに加え、お菓子にも料理にも使える色鮮やかな加熱済み製品などは喜ばれます。
・パッションフルーツは香りはいいが果汁は若干暗めの色彩。健康によく味にコクのでるパパイヤを加えると情熱を感じさせる鮮やかな明るい色調になります。

ⅲ)旨味・苦みを生かす
・苦みは敬遠されがちですが、さっぱりした風味や後味のすっきり感に欠かせない素材です。福岡県豊前市で「ゆず」のペースト商品づくりを手伝いましたが、苦みのコントロールがこの商品の生命線です。苦みを完全に除去すると面白くない味になります。
・出荷段階の身割れで規格外になるイチジクを加熱処理すると素材のもつ旨味たっぷりのソースの元に。ドレッシング、焼き肉のたれ、中華炒めの隠し味にと用途は拡がります。

ⅳ)ボリューム感を生かす
・鹿児島県阿久根市では深海から甘エビが捕れますが、一緒に捕獲される深海魚は見かけがグロなため流通されない魚。しかし低温に住むため脂肪分を蓄え旨味は豊富。そして安いからふんだんに食べられる。この深海魚を使ったフライはけっこういけます。

地元の人が対応できる加工・飲食サービスを目指す
 素材の生かし方と同時に重視するのが、地元の現場の人材や設備機材で対応できる加工や飲食サービスの作業にまでかみ砕いていく経営管理のアドバイスです。どんなに魅力的な商品づくりでも先行的な大規模投資を前提とするのでは、資力に余裕のある人以外にとってはハードルが高すぎて手が着けられません。
 必要な現員スタッフが少しずつ実績を挙げていくプロセスはやはり大事で、その上で生産数量の拡大や新商品の展開を拡げ、組織の人員について拡大を考える、そうした流れを見届けるまでは、私は現場との関わりを継続的に持ち続けるようにしています。
 最初は「自分たちには無理!」と断固拒否をしていた加工グループも、色と香りと味が良い新しい加工品づくりを一緒に作業しながら勧めてみると、いつの間にか目を輝かせて皆が参加するといった場合も結構あります。

現地での加工作業の経験を生かした自社加工へ
 これまでの現場での加工作業の経験を生かそうと、昨年(平成19年)夏に自社の小さな加工室を作りました。各地の農家や漁家の皆さんと競合する製品そのものを作るのではなく、素材の「良いところさがし」を自分で極められる実験室のつもりでした。
 例えば、フルーツのペーストは製品の形にはなっても、馴染みのない単体の商品を買おうというお客さんはなかなかいません。少し工夫しペーストを使った二次加工品の試作を通して商品市場に提案しやすい形を目指すのであれば、お客さんの目に留まることができます。そうした提案の元になる情報収集をここで進めながら、美味しい物は試験販売を行って商品の市場性を確認することも定期的に行っています。

暮らしの灯が消える前にもっと現場に出向く活動を進めたい
 原油高で食品素材価格は軒並み上昇していますが、そうした環境だからこそ、生かし切れていない素材を有効に利用し、生産者自身が手取り・歩留まりを高められるように工夫し、お客さんにより良い商品を提供していく仕組みが各地に必要だと思います。
 しかしながら、各産地では畑を耕し、果樹地を手入れし、船や網を繕って漁に備えるといった生産に関わる人が徐々に姿を消していっています。これまで日本の農山漁村を支えてきた各地の暮らしの灯が思った以上に早く消えてしまうのではないか、そのことを私は強く懸念しています。
 このため、今後は自らが産地の現場に積極的に出向いて様々な応援をしていく活動を進めたいと考えています。消えてしまう前に無理のない活力回復を目指す取り組みが大事と思うからです。

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