2009年02月04日
安全か安さか 揺れる食卓 中国製毒ギョーザ事件1年 国産志向高いまま 家計縮み“妥協”も
中国製冷凍ギョーザによる中毒事件の発覚から1年。この間、輸入食品の検査態勢が強化され、小売店や消費者側も「安全性優先」への意識改革が進んだ。そんな中に訪れた不況の大波に、再び「安全」と「安さ」のバランスが揺れている。
福岡県宗像市のエフコープ生活協同組合商品検査センター。昨秋に増設した4種類の機器が並ぶ検査室では、検査員が粉砕した食品をチューブに入れ、セットする作業に黙々と取り組んでいた。
有機リン系殺虫剤「メタミドホス」が混入したギョーザと同じ商品を扱っていたエフコープは事件後、検査機器を1セット、人員を2人増やし、検査項目を4割増の45万件とした。都甲俊彦センター長は「今後も精度を高め効果的な検査をしたい」と話す。
一方で都甲センター長は、「検査だけで安全と言い切るのは不可能」とも指摘。エフコープは他の生協と、原料から商品に至るまで品質管理できるシステムの構築を検討する。チェック態勢改善の意識そのものは高いが、「中小企業の安全対策の底上げはこれから」(厚生労働省食品安全部)という状況だ。
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事件後、一気に高まった消費者の国産志向。1年たったいま、微妙な変化を見せている。
福岡市東区のスーパーで県内産の水菜を選んでいた松田英子さん(74)は「必ず製造者を確認する。事件後、中国産は一切口にしていない」。7歳の子がいる主婦(36)も「間違って買った輸入野菜を迷わず捨てた」と話す。福岡、佐賀などに店舗展開するサンリブ(北九州市)では、3割ほど落ち込んだ冷凍食品の売り上げが事件発生前の水準に回復したが、「産地表示を気にするなど安全への意識は高いまま」(広報担当者)という。
だが、あるスーパーの店長(49)は「国産の商品しか買わないお客さんは、もう少なくなった」と話す。「意識」はあっても、最近の景気悪化という「現実」が消費者を襲う。「不況でだんなの給料が下がって苦しい」と漏らす福岡市内の主婦(43)は、中国産シイタケやブラジル産鶏肉を購入するようになった。同市早良区の男性会社員(52)も端的に言う。「食品は安いのが一番。食べてすぐ死ぬわけではないし」
さらに長崎や鹿児島でも発覚した、海外産の野菜、ウナギを国産と偽装した問題に、「国産だって100パーセント安心ではない」(熊本市の大学院生)の声も漏れる。
食品流通に詳しい中村学園大(福岡市)の甲斐諭教授(64)は、原材料をきちんと表示する企業の商品を選んだり家庭菜園を始めたりと、消費者として行動できることは身近にあると説き、こう呼び掛ける。「不況だけに、安いものを買い求めるなとは言いにくい。でも、1年たったらもう忘れた、でなく、より慎重になってほしい」
=2009/02/04付 西日本新聞朝刊=

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