西日本新聞

2010年03月07日

「弁当の日」全国578校に 子供の自立一歩ずつ 栃木県宇都宮市 全小中学校で導入

 子どもが作る「弁当の日」の取り組みが全国的に広がっている。親が作って子に持参させるのではなく、子ども自身が手づくりした弁当を携えて登校するのが特徴。発祥の地、香川県綾川町立滝宮小では新年度に10年目を迎えるが、この間、賛同した実践校は小学校から大学まで39都道府県計578校に拡大。中でも、栃木県宇都宮市は市内全小中学校で導入し、人口50万人を超す規模の都市としては異例の積極性で注目されている。
 

 ▼緩く9年計画
 
 「お弁当の日」の名称で2008年度から93小中学校で実践を始めた宇都宮市。元祖の滝宮小の場合、家庭科で調理の基本を学ぶ5、6年生が対象だが、同市は小学1年から。そのため“宇都宮方式”では目標をやや緩く設定している。
 
 「最初から『子どもだけで作ろう』と呼び掛けなくてもいい。ただ、中学卒業までには自分で作れるようになるのが目標。9年計画で自立へ導く狙い」と話すのは、同市教委学校健康課の樽井圭子主事。現在、約4万人の児童・生徒がこの取り組みで年に数回、台所に立つ機会を得ている。
 
 実践には家庭の協力が不可欠。地域によって事情は異なるため、市は具体的な実践方法を各校に任せる。
 
 かつて「大谷石(おおやいし)」の産地としてにぎわった地区にある城山中(生徒数約350人)は、給食と組み合わせるやり方だ。ご飯とひじき煮、オレンジは給食で用意。生徒は足りないおかずを作って持参し、教室で詰め合わせて弁当を完成させる。家庭の負担感を減らし、取り組みを継続させる次善の策という。
 
 ▼ダメ出しせず
 
 本年度3回目の「お弁当の日」だった2月5日。チーズ入り豚カツ、野菜いためを作った3年生大音秀樹君(15)は「弁当は親に作ってもらうものという感覚だったけど、自分で作る自信が少し出てきた」
 
 同中の富田友子校長は元は家庭科教諭。
 
 「家庭科本来の目的は、家庭での実践力を身に付けさせること。調理実習では生徒の『日常』に入り込めないけど、弁当作りでは可能。給食での栄養指導とつなげ、『自分が食べるべきものを作るのは難しくないし、大事なんだ』という感覚を、日常の習いの中で育てることが大切」と話す。
 
 中には、市販のミートボールを袋のまま持参した生徒もいたが、教諭は“ダメ出し”しない。弁当を見せ合ったり交換したりする中で、ほかの生徒の「知恵」に刺激を受けて成長すると信じるからだ。「工夫することは楽しいと気づかせるのが最優先。暮らしとは学び合いであり、競い合いではない。弁当を採点する必要はない」と断言する。
 
 保護者のかかわりは、生徒がまとめる「気づきリポート」に感想や助言を書き込むこと。親子の会話のきっかけになっているという。
 
 ▼生徒会主導も
 
 全国の実践校の中には、子ども自身の思いから弁当作りが広がった例もある。
 
 岐阜市の東長良中(同570人)は昨年6月、生徒会食文化部会が弁当持参の土曜参観を前に、「喜びや感謝の気持ちを持てるよう、弁当は自分で作ってみないか」と校内放送で呼び掛けた。その後、滝宮小の実践を知ったPTA側も全校での取り組みを提案。「生徒も願っている」と話はまとまり、計2回行った。
 
 生徒会は、主体的に臨むムードを盛り上げようと弁当行事の呼称を募集。「心の日-感謝を持って」に決まり、生徒からは「早起きなど大変だったけど、してもらっていたありがたさに気づいた」など前向きな感想が多く出ているという。
 
 同校の深尾雅人教頭は「生徒たちが成長したいと生き生き活動する姿やその笑顔に、教師や保護者が感動させられた。来年度も続けたい」と話した。

=2010/03/07付 西日本新聞朝刊=

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