2009年11月20日

【ふくおかマルシェ連載】マチとムラ 心をつなぐ<1>おたに家(宮崎県高千穂町) 集落の食文化継承へ

p20091120_2.jpg ■マルシェ・ジャポン フクオカ■

 シイタケのだしが効いたうどんに刻んだユズを入れると、食欲をそそる香りが広がる。粘り気のあるヤマイモをかけたとろろ丼には細かいトウモロコシが交ぜられ、彩り鮮やか。天孫降臨伝説が残る宮崎県高千穂町。町中心部から天岩戸(あまのいわと)神社に向かう道半ば、尾谷集落に農業生産法人「おたに家」の店がある。

 「これも食べてみらんですか」。店長の今村勝世さん(62)が差し出したのはこぶりだんご。「こぶり」とは農作業の合間に食べる「軽食」「おやつ」を意味する方言だ。ほどよい大きさと甘さに3個も食べ、満腹となった。長男で専務の康(やす)薦(のぶ)さん(43)は「朝起きてまずやるのがだんご作りの手伝い。おふくろの味ですから」と笑った。

 その康薦さんにはもう一つ光栄建設社長という肩書がある。建設業に軸足を置きながら、農業生産法人という新分野進出に踏み切ったのは3年前の暮れ、前知事が逮捕された官製談合・汚職事件がきっかけだった。指名競争入札を事実上廃止する入札制度改革で公共工事の受注高が激減し、中小業者を中心に倒産や廃業が相次いだ。

 「従業員11人の雇用は何としても維持したい」。県主催の新分野進出セミナーに何度も足を運んだ末、田畑を借りて米、野菜作りから加工・販売まで一貫して行い、郷土料理を味わえる店を出そうと決断した。

 従業員の大半が農家出身だったこともあり、康薦さんを先頭に全員で建設作業の合間を縫って農作業に従事。会社事務所を改装して、昨年4月におたに家を開店した。

 「尾谷集落47戸の協力も不可欠」と女性やお年寄り8人を調理・接客のパートとして雇い、集落の人たちが作った堆(たい)肥(ひ)で小麦やソバ、雑穀なども栽培する。「おたにの力」と名付けたハトムギ茶も来春、販売予定だ。

 康薦さんは「まだまだ手探りだが、尾谷に伝わる食文化を引き継いでいきたい」と意気込む。

(情報開発室・野尻勝彦)

【写真】高千穂の峰々を背に自ら栽培、収穫した米や野菜を手にする「おたに家」の人たち

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 福岡市で開催中の「ふくおかマルシェ」から特色ある出店者を紹介します。

=2009/11/20付 西日本新聞朝刊=

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 ▼青空市場「ふくおかマルシェ」
 来年3月28日まで随時開催。福岡市東区のアイランドシティ中央公園と、同市中央区天神の市役所ふれあい広場。西日本新聞社主催。おたに家=0982(73)2228。開催日時など問い合わせは、マルシェ事務局=092(711)5492。

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