2010年5月10日

【元気野菜de元気人間(吉田俊道)】<3>露地野菜

090531_g.jpg

試練受けて強くなる

 大人が暑いのを我慢しても、今さら汗腺は発達しないけど、子どもの体は汗腺を増やし、暑さに適応しようとします。幼児の時から暗いところで生活すると、少々暗くてもちゃんと目が見えるようになるそうです。断食が体を活性化させることが広く知られているように、生命は試練を与えられたとき、能力を発達させます。

 ヒトを含めて動物は、大きく分けて育成期、繁殖期、老化期があります。育成期の初期は能力が隠れたままの状態ですが、ここで適度な試練を受けると、それを乗り越える力が引き出され、強化されていくのです。でも、体ができあがった繁殖期や高齢期は、あまり無理してはいけませんよ。大人と子どもは生物としてのステージが違うのですから。

 その意味で、幼児期はその後の一生を左右する大切な時期。だから、幼児教育をもっと真剣に考える必要がある。キレやすい子、我慢できない子、転んだぐらいで大けがしてしまう子が増えていますが、生涯にわたって大人が見守ってやれるわけではありません。幼児期に味わう暑さ、寒さ、ひもじさ、けんかやけがなど適切な苦しさは、元気人間になるためにはとても大切な体験です。

 これは植物も同じなんです。農家はキュウリを育てる場合、苗を植えてから数日間はわざと水やりをしません。そうすると根が発達し、長期間収穫が続けられるオトナに育つのです。反対にオトナの時期に水を切ったら、二度と立ち直れない。だから、麦踏みも、発芽したばかりの野菜の根を光に当てる「土中緑化」も、あえて試練を与えることで強い野菜を育てることになるわけです。

 雨風が野菜を頑丈に育て、強い光が先週お話ししたファイトケミカルやビタミンを増やし、寒さが野菜の栄養価を上げて甘くします。環境をコントロールして守られた工場育ちの安全で清潔な野菜もありますが、私には旬の露地野菜の方が、ハウスや野菜工場育ちよりも育ちは遅いけど、その分、生命力あふれる野菜になっているように思えます。

 暑さ寒さや雨、風、光、乾燥などに負ける野菜と、それに打ち勝つ野菜がある。その差は土が微生物いっぱいであるかどうか。人でいえば、苦しさをバネにできる底力は、いのちいっぱいの食と、何より親の情愛の念からはぐくまれるのでしょうね。

 連載に対する感想や体験談を、食・農取材班までお寄せください。ジュースや揚げ物を減らすなど八項目の約束と、毎日の体温や便通、食事内容を四週間書き込むことで、体調改善に弾みがつく「おなか畑の土作りノート」を抽選で、十人に差し上げます。(NPO法人「大地といのちの会」理事長)

=2009/05/31付 西日本新聞朝刊=

記事一覧

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]