2010年5月10日

【元気野菜de元気人間(吉田俊道)】<5>根っこ

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虫も食わない元気野菜(上)と虫食い野菜(下)。同じ人が同じように育てたのに、土が違えばこんなに違う

虫も食わぬ野菜こそ

 「この虫食いの葉っぱこそが、無農薬の証拠!」。無農薬野菜を売る通販雑誌に、こんな広告が載っていました。

 でも、無農薬だと虫がよく食べると思ったら大間違い。なぜならアオムシもアブラムシもダニもニジュウヤホシテントウも、同じ種類の野菜の中で、できるだけ不健康な野菜、つまりまずい野菜を選んで食べているのですから。

 例えば私たちは新鮮な刺し身が好きですが、ハエは腐った刺し身の方にたくさん集まるように、私たちが不快に感じるにおいや、弱ったものが大好きな生き物がいるんです。同じように害虫も弱った野菜や老化した野菜の出すエチレンガスなどのにおいに寄ってくることが多い。だから野菜を虫から守るときのポイントは、野菜自体を健康にすることです。

 野菜がもっと元気だったら、虫も菌も食べ尽くすまでには至りません。だから、正確に言えば、虫がいないか、いてもちょっとしかこない無農薬野菜こそ、理想のおいしい元気野菜といえます。

 2枚の写真を見比べてください。ともに、同じ人が、同じ畑に、同じ品種を、同じ日にまいて育てた大根ですが、片方は虫食いで、片方は完全な姿。違いは土の差でした。

 上の写真の大根は、膨大な雑草をすき込んでミネラルと微生物だらけにした土で育った。そのまま浅漬けにして食べ比べたら、虫食いの方が葉も根もはっきりえぐくてまずかったです。本当に感動しました。人と虫は戦わなくても、ともに生きられたのです!

 これまで農業の世界は、土が弱り、野菜が弱くなった根っこのところに目を向けず、病害虫を農薬で殺す対症療法にばかり力を注いできました。でも相手も必死に生きる生き物。薬剤をたくさん使えば使うほど、菌はもっと強くなり、「耐性」がついてきました。

 それはまさに、生きるためにマスクでウイルスから逃げたり、薬剤で菌やウイルスを殺そうとしたりする人間社会そのもの。だから私には、農薬や化学肥料を使わない有機農業の世界は、病害虫と折り合いをつけて、ともに生きる道があることを教えてくれているように思えるのです。
 (NPO法人「大地といのちの会」理事長)

=2009/06/14付 西日本新聞朝刊=

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