2010年7月15日

むすび庵便り・八尋幸隆<9>研修生(2) 心に向く仕事実感

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ニワトリ小屋で作業する研修生の才津猛さん(右)

 研修生シリーズ第2弾は、私が引き受けた中で最年長。昨年4月から研修している才津猛さんです。

  ×  ×

 4月某日、晴れ。朝6時の体操で1日が開始。まず朝飯前に畑に行き、キャベツとキヌサヤエンドウの収穫、ニワトリの世話。朝食をいただいて再び畑へ。数カ所に点在する畑を移動しながら、夏野菜の定植。

 昼食後も畑。食事と休憩以外は、夕方暗くなる前まで収穫、野菜そろえ、種まき、育苗、移植、うね立て、定植、水やり、草取り、虫取り、時期によっては漬物加工、みそ造り、ニワトリさばき…。何らかのことで体を動かしています。

 雨が降れば屋根のある場所での作業、師匠とひざを交えての学習会など。ときには作業を早めに切り上げて懇親会になだれ込むことも。黙々と草取りが続くこともありますが、つらいと思ったことはありません。夜はぐっすり眠れます。

 46歳、独身。転職歴、引っ越し歴多数。何かを始めるには中途半端な年齢でしょうが、それでも農業を始めようと思ったのは、病気が絡んでいます。32歳で急性心筋梗塞(こうそく)を発症。その後、就農に向けて動きだしましたが、再発したこともあって断念してしまいました。以後、薬は続けていたのですが、今度は突然のパニック発作。軽い精神安定剤を処方され、薬が効いて眠っている間はまだしも、薬効が切れれば気分は最悪になるのです。

 そのころから、「そろそろ好きなことをやろう」と、再び就農への道を探り始めました。ネットで調べ、図書館に通い、宇根豊さん、内山節さん、山下惣一さんといった方々の本を読み進め、八尋幸隆さんの存在を知り、「無理やりねじ込んで」研修生にさせていただきました。

 研修生は、無給・食事付きで期間1年が原則です。本年度は八尋さんが国の「農の雇用事業」を受けており、例外的に私は有給ですが。

 1年に1度きりということが多い農の仕事。頭で理解できることなど、たかが知れているから、一生をかけて経験し、失敗を繰り返しながら学ぶしかないのでしょう。最高の師に恵まれたこの期間に、就農に向けての技術全般を習得しなければなりません。休むのはもったいないから、私は八尋さんちの向かいのアパートを借り、フルタイムで働いています。1日が、1カ月が、あっという間に過ぎていきます。この仕事はやはり、私の心に向いている。それが今の実感です。

 私は今年8月から、佐賀市富士町で就農します。「今までの研修生の中で最も心配だ」と、八尋さんから言われるように、もちろん不安はありますが、私は、私のこれからを楽しみにしています。 (福岡県筑紫野市「むすび庵」庵主)

=2010/05/16付 西日本新聞朝刊=

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