2010年5月12日

【豊後水道 奮闘記(村松一也)】<12>あまべ渡世大学

あまべ渡世大学でウニ割り体験をする子ども

体験観光で展望開く

 昨年6月に供用を開始した東九州自動車道佐伯インターと、高速道路の「千円効果」でにぎわう蒲江。でも、わしには不安材料があるんです。

 それは近い将来、高速が延岡まで延びること。「そんくらい誰でん知っちょるわい」っち、地元のもんは言うけど、つながれば確実に流れが変わる。今は佐伯インターが終点じゃけ、降りた人たちの7割方が蒲江を目指し、インターから40分もかけて来ちくれるけど、これが宮崎、鹿児島まで行けるようになったら…。

 人は終点まで行ってみたいと思うもの。よほどの魅力がないと、途中下車なんかはようしません。蒲江が「魚を食べるところ」っちゅうイメージから脱皮できんかったら、いずれ通過点の一つになるかもしれん。

 全国的に見ると、田舎で観光客誘致で頑張っちょる所は、地域が連携し、点や線ではなく、面としての魅力を発信しちょる。蒲江の場合も地元の人たちを講師に見立てて、都会の人に漁村を体験してもらう「あまべ渡世(とせい)大学」のような、蒲江でしかできん取り組みを、今のうちに軌道に乗せちおきたいんです。

 「渡世」ちゅう言葉に違和感を感じますか? でも、渡世とは本来、世渡り、なりわい、くらしという意味で、蒲江で「あいつは渡世がうまい」とか言うと、それは「商売にたけちょる」とか「仕事がでくる」とかいう褒め言葉なんじゃ。

 この大学では、海にかかわる体験観光をします。ウニ割りとかもあるけんど、わしのとこだったら、ブリの養殖・陸上養殖施設での餌やり体験、魚の調理・熱めしづくり体験など。ライフジャケットを着けて、漁船にも乗っちもらいます。そして、自分たちで食べるブリの育つ姿や、どのブリを食べるのか自分たちで選んで殺す(活(い)き締め)作業もさせた上で、一人一人刺し身包丁を渡し、刺し身を引かせる。2年もかけて育ったブリの命を自分たちのために殺して、食べる。それによって心から「いただきます」や「ごちそうさま」が言える子どもに育つちゅう思いから、体験の受け入れをしちょるんです。

 こんなふうにお客さんを一日、あるいは一泊しちもらっても飽きんような仕組みを作り、蒲江や蒲江の漁業に対する理解を深めちもらう。そうして、熊本大学の徳野貞雄教授が言うような「親せき付き合い」ができる人を増やすことが、生産者と消費者、お互いにプラスになるち思うんです。

 「チャンスはピンチの顔をしてやっちくる」と誰かが言いよったけど、人生にはその逆もよくある。だから、道の駅で何人集客して、いくら売り上げたちゅうレベルで満足しちょったらいけん。追い風の吹く今だからこそ、地域が一体となって考えるべきときと思うんじゃ。 (「かまえ直送活(い)き粋(いき)船団」代表)

=2009/11/01付 西日本新聞朝刊=

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