2010年5月12日

【豊後水道 奮闘記(村松一也)】<13>出前授業

ブリの解体ショーでは包丁の入れ方も教える

魚で頭が良くなる?

 漁業の実情や魚のおいしさを知ってもらうため、10年以上続けちょる活動があります。それは、漁協やPTAなどに頼まれて、主に大分県内の小中学校で行なっちょる出前授業「ブリの解体ショー&お魚講座」。一本ままのブリを見たことのない子どもらに実際に触れさせたあと、養殖漁業や海の話などをするんじゃ。

 パソコンで写真を見せながら進めるんやけど、「わかりやすく」っちゅうところが難しい。ついつい仕事仲間で使う専門用語が口をつくんじゃ。特に、小学校は1―6年生と、年齢の幅があるから、皆がわかるように話すには、かなりの訓練が必要じゃったです。

 講演は、自分がしゃべりたい話をすることよりも、相手にどれだけ伝えきるかにあると思います。例えば、「魚を食べるとなんで血液がサラサラになるか」っちゅう話は、大人には「不飽和脂肪酸のEPAやDHAが多く含まれちょるから」で済むが、子どもらには伝わらん。だから「変温動物の魚は、水温と同じ体温で成長する。じゃから、海水温と同じ20度ぐらいでできる魚の脂は、36―37度の体温がある人間の中では、決して固まらんのじゃ」ちゅう感じで表現します。

 話のあとはブリの解体ショー。子どもに包丁を持たせ、刺し身を引かせます。でも、たいがいナイフや包丁を持った経験がなくて、どうやったら手を切るかがわかってないから、このときがいちばん怖いんです。

 まずは一緒に手を添えて一切れ引き、次に子どもだけで引かせます。当然ながら、分厚くてかっこ悪い刺し身になりますが、「どちらか食べていいよ」っちゅうと、必ず自分が引いた方に手を伸ばすのが面白い。

 大分の山間部の小学校で授業を終え、お茶を飲んでいたときのこと。校長先生が「1年生の女の子2人もお刺し身食べましたね」。なんのことじゃろっち思いよったら、「彼女たちはいつも給食の魚をことごとく残すんですが、今日、村松さんのブリを食べたのにびっくりしたんです」。日当も出らん出前授業やけど、こんなことがあるからやめられんくなって、現在に至る、ちゅうわけなんです。

 自分で刺し身を引く、おいしく食べちもらおうと漁師が工夫しちょる話を聞く。ブリ自体の味は変わらんでも、それによって食べる人の気持ちが変わり、食べ物がいとおしくなる。それは子どもだけの話じゃないと思うがの。

 ではわしが、授業の最後に子どもらに言う話を。

 「『魚を食べたら頭がよくなる』ちゅう先生がおるかもしらんが、そんな先生がおったら、うそつきじゃぞ。魚を食べて頭がよくなるんじゃったら、漁師は、みーんな東大に行っちょる。魚を食べて、勉強したら頭がよくなるんじゃ」 (かまえ直送活(い)き粋(いき)船団)

=2009/11/08付 西日本新聞朝刊=

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