2010年5月12日

【豊後水道 奮闘記(村松一也)】<最終回>情報発信

「これからもふるさとのため、みんなと頑張っていくどー」(村松一也さん)=前列中央

大事なんは相互理解

 連載もこれで最終回。消費者の皆さんに、漁業の生産現場のことや漁師町の暮らしのことなど、少しでも分かってもらえたらうれしい限りです。

 とはいえ、漁業を含めた1次産業界が、大変厳しい状況にあることに変わりはありません。ではなぜ、今のように国内で食べ物を生産する人々がこのような状況になってしまったのか?

 わしが思うに、生産者側の問題点は、誰が食べてくれよるんかを分かっとんのか、ちゅうこと。生産者に聞けば、「そりゃ、消費者に決まっとる」っちゅう答えが返ってくるじゃろ。しかし、その消費者っちいわれる人たちのことを、生産現場は、どれほど知っちょるじゃろうか?
 「食」を商売にしちょる人たちは、綿密なマーケティングでお客さんの消費動向やニーズを的確につかみ、ときにはマスコミも使ってブームを起こして、上手に商品やサービスを売り込んじょる。その点、多くの生産者の場合、入る情報の大半は流通業者から。だから「消費者ニーズ」といったところで、しょせん流通業者のニーズじゃし、値段も言われるまま。生産者のこだわりや思いなどは、食べる人たちにまでは届きはせんし、食べよる人の顔も見えてはこん。

 お互いのことを知ろうともせずに経済効率だけを追い求め、食べる人と作る人の距離が大きく離れてしまったといわれる現代。そんな時代に、生産者であるわれわれに課せられているのは、「食」を提供する者として、責任あるものを作り続けることと併せて、食べてくれる人たちに自分たちの取り組みや考えを、どんどん発信していくっちゅうことじゃなかろうか。

 確かに現場は、仕事に追われて時間はないし、デパートやスーパーにしょっちゅう出かけるわけにもいかんことは、それをやってきたわし自身がよーく分かっちょる。ならば自宅や生産現場から直接、生の情報をネットで出したらどうか。誰か見たい人が探しよるときに、ふと目に留まることがあるかもしれんじゃろ。少しの時間と手間をかけても、現場の悩みや喜びを自らの肉声で伝えることは、生産と同じくらい大事じゃし、そんな漁師がたくさん出ちくれば、世の中、おもしろくなるど。

 消費者の皆さんにも、命を支える「食」にもっと興味を持ち、生産しよる人たちに近づいてきてほしいです。そうした行動が積み重なって相互理解が深まれば、食料自給率の問題をはじめ、教育や環境や福祉とか、今、社会が抱えちょる問題も、ちっとはましな方向に向かうんじゃなかろうか、っち思います。

 奮闘記はこれにて終了。どこかで鉢巻きしちょる大男に会ったら、気軽に声かけちくりー。ありがとうございました。 (「かまえ直送活(い)き粋(いき)船団」代表)

=2009/11/15付 西日本新聞朝刊=

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