西日本新聞

2010年05月12日

【木挽棟梁のモノサシ(杉岡世邦)】<2>ウッドデッキ

ゆったりとした時が流れる夕暮れのウッドデッキ

水に強い赤身材を

 デザインの和洋を問わず、このところウッドデッキのある家が増えています。内と外とを緩やかにつなぐウッドデッキは、開放感があり心地のよい空間です。その原型ともいえる「縁側」は、北は青森から南は沖縄まで、各地の重要文化財指定の民家にも見いだすことができます。「ウッドデッキ=心地よい」という感性は、長年刷り込まれてきた日本特有の住文化といえるのかもしれません。

 数年前、お客さんから相談を受けました。

 「今にもウッドデッキの床が抜けそうで怖いんです。5年もたっていないというのに。水に強いといわれるヒノキです。しかも節が少ない上等なものでした。今回は違う業者に相談したのですが、長持ちするからと防腐塗装を勧められました。でもうちの子はアトピーだし、軽いぜんそくなので抵抗があります。木が腐れるのは仕方のないことでしょうか…」

 私は二つ質問しました。

 「デッキ板の厚みは?」

 「15ミリです」

 「板と板の間にすき間はありますか?」

 「いいえ」

 おおよその想像がつきました。ヒノキの内装用床板が使われているのです。ヒノキが水に強いのは間違いありませんが、それは芯に近い赤身の部分。節が少ないその板は、木の周辺部の白太(しらた)でしょう。樹種を問わず耐久性の低い白太をすき間なく張っているのですから、水はけが悪く、木が傷むのも無理ありません。

 ウッドデッキは、昔で言う濡(ぬ)れ縁。私は塗装なしに何十年も保った濡れ縁を、何度も見てきました。それをまねればよいのです。

 材は腐れにくい赤身材。心材といわれる赤身には、樹木がカビや腐朽菌、害虫などから、自らの身を守るために樹脂などが蓄えられているのです。

 樹種はコストを考えると、杉の節あり材でいい。厚み4センチ×幅7センチ程度の板を、1・5センチほどのすき間を空けて張ります。

 ポイントは7センチの面を、日に当たっても割れにくい柾(まさ)目(年輪に対し直角に割った、直線が並んだ木目)にすること。外部で使うには、この「割れない」ことが肝心ですから。

 いくら水に強くとも、割れたところに水が入ると木は傷みます。濡れたり乾いたりを繰り返す桶(おけ)に柾目板を使うのもそのためです。

 「これなら5年で床が抜けることは、まずありません。ただし何も塗らない場合、杉は年々灰色に変色することをご理解くださいね」。私はそう言って受話器を置きました。

 要は適材適所。樹種だけでは決められないのです。長持ちさせようと思ったらなおさらです。これ、組織にも相通じると思いませんか? (「杉岡製材所」専務)

=2009/11/29付 西日本新聞朝刊=

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